■弾劾の手続き

 弾劾の手続きは2段階からなる。合衆国憲法が規定する「反逆罪、収賄罪、他の重大な罪または軽罪」に値する罪を大統領が犯したと議員らが考えるとき、弾劾を発議できる。

 最初の投票は下院で行われ、単純過半数が必要とされる。下院で弾劾が支持された場合、上院での弾劾審議に移り、定員100人の3分の2以上の多数の賛成で弾劾が決定される。この段階まで達した場合、大統領は罷免され、上訴の手段はない。上院の投票で有罪を免れれば、大統領は無罪となり職に留まる。

 現在、弾劾手続きは開始されていないし、開始されないかもしれない。

 民主党幹部らは、弾劾を求めるにはまだ時期尚早で、まず根拠となる事実関係を立証しなければならないと述べている。下院情報特別委員会の民主党筆頭理事、アダム・シフ(Adam Schiff)議員は「選挙を他の方法で無効にするための試みだと捉えてはならない」と語った。

 何人かの議員からは、司法妨害は弾劾に値する犯罪だという指摘が上がっている。ニクソン大統領はウォーターゲート事件で失墜し、クリントン大統領は下院での弾劾にまで至った。

 司法妨害があったことを示唆する最新の疑惑は、トランプ氏が2月にコミーFBI前長官に対し、マイケル・フリン(Michael Flynn)前大統領補佐官(国家安全保障担当)に対する捜査から手を引くよう要求したという報道だ。コミー氏は、トランプ氏がこれを要求したとされる面会時にメモを取っていたとされている。

 共和党内部でこれまでトランプ氏に批判的な姿勢を示してきたジャスティン・アマッシュ(Justin Amash)下院議員は、コミー氏のメモが本物だとすれば弾劾の根拠となるだろうと同意した。同氏は初めて弾劾の可能性について公に語った共和党議員だ。「だが、わが国では、誰もが公平な審判を受ける」と同氏は述べている。

 下院の議員らは、コミー氏が公聴会での証言で彼から見た一連の出来事について語るのを今や遅しと待っている。(c)AFP