【5月26日 AFP】映画界のヒエラルキーでは、トップは米ハリウッド(Hollywood)、次がインドのボリウッド(Bollywood)、そしてナイジェリアのナリウッド(Nollywood)と続く──アフガニスタン人俳優兼映画監督のサリム・シャヒーン(Salim Shaheen)氏は「そして、そのリストのずっとずっと下の方にわれわれの『ナッシングウッド(Nothingwood)』がある」と語る。

 フランス・カンヌ(Cannes)で開催中の第70回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)の記者会見でこのように語ったシャヒーン氏は、自らの年齢を「51歳か53歳」と話す。この恰幅の良いアフガニスタンの映画人をカンヌは大きな驚きをもって歓迎した。

 フランス人監督、ソニア・クロンルンド(Sonia Kronlund)氏が手掛けたドキュメンタリー作品『ナッシングウッド』は、映画を鑑賞するだけで命を落としかねないアフガニスタンで、これまでに111作品を制作してきたZ級映画監督の物語だ。この驚きに値する映画監督とエキセントリックな俳優陣らをテーマに描いたドキュメンタリー作品は、カンヌ映画祭で大きな注目を集めている。

『ナッシングウッド』は、シャヒーン監督とその死をも恐れぬ情熱への、ユーモアあふれる心からの賛辞だ。米芸能誌ハリウッド・リポーター(Hollywood Reporter)について「世界で最も多作の映画監督」と伝えた。しかし、シャヒーン監督が手掛ける低予算の作品群には、いわゆる「駄作」も数多く含まれているという。

 アフガンのスティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)と呼ばれているシャヒーン氏は、「映画のためなら死んでもいい」とAFPの取材に語った。これは軽い気持ちでの冗談などではない。事実、1995年に撮影現場にロケット弾が着弾し、俳優とスタッフ9人が死亡している。

 アクションやメロドラマ作品を作るために、同氏と勇敢な仲間たちは、いつも地雷原や旧支配勢力タリバン(Taliban)をかわしてきた。

「自分は死よりも強い」と語るシャヒーン氏。「われわれアフガン人は死ぬことについて恐れない。いつか死はやって来るんだ、それがいつかが分からないだけ」 とも話した。