■容赦ない襲撃

 マイドゥグリの人口は倍増し、既に200万人を超えている。紛争を逃れ避難場所を求めて人々が流入しているためだ。その中には、子どもたちも大勢含まれている。

 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)の児童保護の専門家サミュエル・マニオク(Samuel Manyok)氏は「一度も学校に通ったことがない子どもも大勢いる」「(状況は)ソマリアと南スーダンを合わせたのと同じくらい酷い」と説明している。

■痛ましい現実

 ボコ・ハラムに生活を台無しにされた子どもたちを学校に戻すことは、大勢が心に傷を負った社会に彼らを復帰させるためのハードルの一つに過ぎない。

 そうした子どもたちの一人、アイシャさん(15、仮名)は、元遊園地敷地内のコンクリート製のテーブルに着きAFPの取材に応じた。そして2015年にボコ・ハラムに村を襲撃され、家族で生き残ったのは自分だけだと語った。

 ボコ・ハラム側は、アイシャさんと戦闘員の一人とを結婚させろと迫ったが、両親がこの要求を拒否した。するとその場で父親が射殺され、母親は糞尿まみれの仮設収容所に放り込まれた。そして数日後、飢え果て疲れ果てた母親はとうとう娘を手放してしまったのだという。

 アイシャさんはボルノ(Borno)州のボコ・ハラムの拠点、サンビサ森林地帯(Sambisa Forest)で、ボコ・ハラムの戦闘員と結婚させられ、やむなく夫婦としての生活を送っていた。

 イスラム教徒の女性が使う「ヒジャブ」で頭を覆い、鼻に2つの飾り鋲をした、どこか用心深い目のアイシャさんは、ボコ・ハラムの戦闘員が幼い少年少女に爆発物を取り付けるのを見たという。

 ボコ・ハラムは家族のためと言って少年少女らに5万ナイラ(約1万8000円)を与え、(自爆すれば)天国に行けると話していたことを明らかにし、これを拒否した子どもたちがそのまま殺されてしまうとも述べた。

 アイシャさんは2016年12月、ナイジェリア軍がサンビサ森林地帯に進攻した際に救出された。彼女は今、マイドゥグリの国内避難民キャンプで、同じ村出身の男性と暮らしている。

 アイシャさんは現在、学校には通っていない。将来の夢は何かと問われても、よく分からない様子だった。質問後、しばらく時間をおいてから「服が私を幸せにしてくれる」とようやく答えた。