【5月25日 AFP】「絶対に消えない明かりがある(There is a light that never goes out)」──英マンチェスター(Manchester)で起きた爆破事件の犠牲者を追悼する会場に夕暮れが迫る中、この街の深く豊かな音楽的水脈をあらわにする歌声が周りを鼓舞するように響いた。

 群衆の中の一人が声を張り上げて歌ったのは、往年の英インディーロックバンド「ザ・スミス(The Smiths)」の1986年の同名の曲の歌詞だった。ザ・スミスの他にも、マンチェスターから生まれて世界的に有名になったバンドやミュージシャンはあまたいる。22日、米歌手アリアナ・グランデ(Ariana Grande)のコンサート会場で22人が犠牲となった攻撃は、この街の精神に対する冒涜(ぼうとく)だったのだとその歌は思わせた。

 イングランド(England)北西部にあるマンチェスターは、音楽的に多大な影響力を持つ独創的なバンドをきら星のごとく輩出してきた。ビージーズ(Bee Gees)、バズコックス(Buzzcocks)、ジョイ・ディヴィジョン(Joy Division)、808ステイト(808 State)、ニュー・オーダー(New Order)、ザ・ストーン・ローゼズ(Stone Roses)、オアシス(Oasis)、ザ・ヴァーヴ (The Verve)、テイク・ザット(Take That)──世代やジャンルを超えたさまざまなバンドがこの街から生まれた。

 1970年代にはパンク革命の最前線を担い、1980年代後半にはアシッドハウス音楽でクラブシーンを席巻。その後、ギターサウンドとグルーブが一体化した「マッドチェスター(Madchester) 」と呼ばれる音楽ムーブメントからは、ザ・ストーン・ローゼズやハッピー・マンデーズ(Happy Mondays)といったバンドが誕生した。