■ホームレスにも「思いやる心ある」

「小さな女の子もいました……両足を失っていた子が。売り物のTシャツでくるんでやって『ママとパパはどこ?』と尋ねると、その子はこう言うんです。『パパは仕事。ママはあっち』と」

 パーカーさんは、少女の母親は亡くなってしまったのだと思ったと語っている。

 マンチェスターで路上生活を送ってほぼ1年になるパーカーさんは、収容人数2万1000人のマンチェスター・アリーナから来場者が帰るときに小銭を恵んでもらうため、よくこの会場に足を運んできた。

 パーカーさんは現場で1人の女性の最期をみとったという。「私の腕の中で息を引き取りました。60代の女性で、家族と一緒に来ていたと話していました」

 現場で被害者に手を貸したホームレスの人は、パーカーさんだけではない。

 会場近くで路上生活を送るスティーブン・ジョーンズ(Stephen Jones)さん(35)も、同じように「本能的に」助けに行った。

 元れんが職人のジョーンズさんは英ITVの取材に「ホームレスだからといって、私に人を思いやる心がないわけではありません」と語っている。

「マンチェスターには善良な人たちがたくさんいて、困っている私たちにも手を差し伸べてくれます。だから私たちもお返しをしないといけないんです」

 報道を受けて、クラウドファンディングのウェブサイトにパーカーさんやジョーンズさんのための募金ページが開設された。それぞれ1万ポンド(約145万円)を超える寄付金が寄せられている。

 パーカーさんの募金ページを立ち上げたマイケル・ジョンズ(Michael Johns)さんは、「私たちの社会の中で最も弱い立場にありながら、無私無欲の精神と勇気を示してくれた人間の一人」を助けるために何かせずにはいられなかったと説明している。(c)AFP