【5月25日 AFP】ヨルダン北部の砂漠地帯にある難民キャンプで暮らすシリア難民、ラチャ・ハダル(Racha Hadar)さんと8人の子どもたちは、キャンプに太陽光発電が導入されるまでは今よりもっと厳しい生活を強いられてきた。

 仮設住宅の外は気温40度に達する砂漠地帯で「扇風機や冷たい水のない生活を想像してみてください」と話すハダルさん。だが今では、シーリングファン(天井扇)が回転する下で、3歳から14歳までの子どもたちに囲まれながらテレビを見ている。シリア内戦を逃れ、18か月前にこのキャンプにやってきたハダルさんは、「状況は変わった。もう停電は起きないし、きれいな水も飲める」と話し、太陽光発電施設が稼働して以来「生活は改善した」と語った。

 アズラク(Azraq)難民キャンプは、ヨルダンの首都アンマン(Amman)の東約100キロに位置し、気温は夏には50度まで上昇することがあるが、冬には氷点下まで下がる。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は今月17日、キャンプ内の太陽光発電所の操業を正式に開始した。この太陽光発電所の総工費は約900万ドル(約10億円)で、資金は家具販売大手イケア(Ikea)の基金が提供した。発電能力は2メガワットで、まずキャンプの難民3万5000人中2万人近くに対し、2年半ぶりとなる電気を供給している。

 ヨルダンのUNHCR代表によると、太陽光発電所はまず、キャンプ内の2つの村に住む難民に電気を供給。照明や冷蔵庫、テレビなどの使用に加え、知人や家族との連絡を保てるよう携帯電話の充電にも利用される。発電能力は今後、5メガワットに引き上げられる予定で、残る1万5000人の難民にも電気の供給が拡大されていくという。(c)AFP/Mussa Hattar