【5月20日 AFP】ブラジル・リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)に住むメルセド・ギマラエス(Merced Guimaraes)さん(60)の家で、改装中に床下から大量の人骨が見つかった。連続殺人鬼が残した証拠だろうか。警察に言えば、自分が犯人だと疑われるのではないか──恐れをなした大工たちは仕事を放棄して逃げてしまった。

 だが、さらに恐ろしいことが分かった。彼女の家はアフリカ人奴隷数千人の遺骨の上にあったのだ。そこは米大陸で発見された最大の奴隷墓地だった。その歴史に触れた1996年の偶然の出来事が、エネルギッシュで陽気なギマラエスさんの人生を変えた。

 彼女は小さな家族経営の会社を子どもたちに譲り、快適な家を建てる代わりに、その家を博物館に変える計画に乗り出した。「人道に対する罪の生きた証拠」をつくりたかったのだ。

 2005年についにそれが実現し「新黒人記憶・研究博物館(Instituto de Pesquisa e Memoria Pretos Novos)」が開館した。まだ掘り出されていない骨が詰まった大きな穴を中心にすえた同博物館には、昨年までに7万人が訪れた。来館者の数はさらに急速に増え続けている。

 だがその成功にもかかわらず、博物館は閉鎖寸前となっている。明らかな理由は資金不足だ。厳しい不況とリオデジャネイロ五輪開催の後遺症で政府からの補助金は削られ、電気代の支払いや掃除用具の購入もままならなくなった。

 だがギマラエスさんは、究極的には問題の根はもっと深く、ブラジル人は単に「国の恥」を直視したくないのだと言う。