【5月17日 AFP】人権保護の各団体は、メキシコで続いているジャーナリストの殺害事件をめぐり、これら事件が白昼堂々行われているにもかかわらず、実行犯が罰せられない現状について訴えた。15日にも麻薬組織を取材し続けた著名ジャーナリストハビエル・バルデス(Javier Valdez)氏(50)が白昼に路上で銃撃され死亡したばかりだ。

 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団(RSF)」は、ジャーナリストにとってシリア、アフガニスタンに次いで3番目に危険な国とメキシコを位置付けている。

 いわゆる「麻薬戦争」では、軍と強力な麻薬犯罪組織が対立し、そしてその中間に腐敗した当局者らが陣取っている。そしてメディアに取り上げられることを良しとしないこの中の誰かが殺人を犯しながらも刑罰を逃れている。

 RSFによると、2016年にメキシコで殺害されたジャーナリストは16人。この数字は過去最多だ。

 以前は記者が秘密裏に拉致されて殺害されることが大半だったが、バルデス氏を含め、最近では白昼堂々町中で襲撃・殺害されるケースが増えている。

 表現の自由を求める人権組織「Article19」のメキシコ支部で代表を務めるアナ・クリスティーナ・ルエラス(Ana Cristina Ruelas)氏はここ最近の一連の行為について「恥知らず。ひとを馬鹿にしている」と怒りをあらわにした。そして「過去10年間、危険度が増す一方のこの状況に対して、われわれは声を大にして注意してきた」「それでも国はまともな捜査を行うことができず、それがジャーナリスト殺害を誘発している」と述べた。

 州検察の関係者によると、バルデス氏が殺害されたのは同氏の事務所近くの路上だった。AFPにも寄稿していた同氏は、出身地である北西部シナロア(Sinaloa)州の麻薬犯罪組織について、メキシコの新聞に詳しい記事を書いていた。

 今年殺害されたその他4人のジャーナリストも外出中を狙われた。

 米ニューヨーク(New York)に本拠を置く国際非営利団体「ジャーナリスト保護委員会(Committee to Protect JournalistsCPJ)」は今月、「メキシコの報道機関は、暴力行為と捕まることのない犯罪者のサイクルに巻き込まれてしまっている」と報告書で指摘。そして、一部司法の努力を認めつつ、「この状況に終止符を打つという政治的意思の欠如が、この国をジャーナリストにとっての世界最悪レベルの危険な場所にしている」と書いた。

 バルデス氏の殺害事件についてCPJ事務局長のジョエル・サイモン(Joel Simon)氏は、「メキシコのジャーナリズムと国全体に沈黙の影が広がるのを目の当たりにしている市民への打撃だ」と述べている。(c)AFP/Sofia MISELEM