■「難民認定には何の意味もない…」

 だが難民認定者になってから受けられる恩恵はそう多くはなかった。10代になった娘と再会できるめどはいまだに立っておらず、家族訪問を希望する娘の申請もことごとく却下されている。

 リリアンさんにとって、日本での教育と安定した生活機会を得るのは簡単なことではない。外国人が日本で暮らすのは難しく、言葉が大きな壁になると彼女は話す。日本語を話すにはあらゆる努力を必要とするが、無償で提供される日本語教室の存在については何も知らないという。「時々、難民認定には何の意味もないと思ってしまうことがある」と、ため息交じりに語った。

 一方、ミャンマーから日本に身を寄せているノンノンさん(47)にとって、難民認定は少なくとも日本への帰属意識を与えてくれるだろう。「ノンノン」は子ども時代のニックネームなのだという。

 ノンノンさんは25年前、軍部による迫害を逃れて母国を後にしたが、法的には今も不安定な立場に置かれている。人道的な配慮から在留資格を認められ、日本での居留、就労は可能となったが、これらの資格は通常一定期間の在留のみを認めるもので、その都度の更新を必要とする。この更新手続きは申請者に不安を強いるものだ。

「自分の国を出て大使館とも関わりはない。日本でも難民と認められておらず、無国籍のような状態」とノンノンさんは現状を説明する。

 彼女は、ミャンマー出身で同じく難民認定申請を行っている男性と日本で結婚し、1男1女に恵まれた。しかし、子どもたち2人の国籍はミャンマーからも日本からも認められておらず、実質的には無国籍者となっている。

 難民支援団体は、この日本の制度について厳し過ぎると指摘する。

 ミャンマーの少数民族カチン族出身のある女性を支援している弁護士の渡邉彰悟(Shogo Watanabe)氏は、帰国すればカチン族の武装勢力と対立する政府軍の兵士らによって性的暴行を受ける恐れがあると述べ、「軍によるレイプの危険性がある、というだけでも十分に難民の要件にはなると思うが、入管(法務省入国管理局)は実際に軍からその個人がターゲットになっていると証明できるのか、などと聞いてくる」と難民申請の難しさの一端を明かした。