【5月5日 AFP】2005年以前に樹立された陸上競技の世界記録を抹消するという急進的な提案について、国際陸上競技連盟(IAAF)の上級役員が4日、ひきょうな案ではないと語った。

 IAAFの最高責任者オリビエ・ガーズ(Olivier Gers)氏は、女子マラソンの世界記録保持者であるポーラ・ラドクリフ(Paula Radcliffe、英国)氏の批判に対し、「これに関して何がひきょうなのか分かりません。いくつかの記録について疑いがあるというのは、われわれにとって悲しい現実です。ひきょうという言葉は、われわれの案に対して非常に激しい言葉だと思います」と述べた。

 2003年に2時間15分25秒という女子マラソンの世界記録を樹立したラドクリフ氏は、欧州陸上競技連盟(European Athletics)の提案について、「ひきょう」で「私の名声や尊厳を損なうものです」と厳しい批判の声を上げていた。

 ガーズ氏は、ダイヤモンドリーグ(IAAF Diamond League 2017)の開幕戦が行われるカタール・ドーハ(Doha)でコメントを残したが、同大会に出場する選手からはこの世界記録に対する案についてさまざまな反応が見られた。

 記録の白紙化で恩恵を受ける可能性のある選手の一人であるリオデジャネイロ五輪女子100メートル、200メートル金メダリストのエレーン・トンプソン(Elaine Thompson、ジャマイカ)は、入り交じった視点から主張を繰り広げた。

 女子短距離2種目の世界記録は、故フローレンス・グリフィス・ジョイナー(Florence Griffith-Joyner、米国)氏が1988年に樹立した。

 トンプソンの100メートルの自己記録は10秒70、200メートルは21秒66で、ジョイナー氏が約30年前に記録した10秒49と21秒34に後れを取っている。

 トンプソンは「(ジョイナー氏の)記録は私の生まれる前に樹立されたものです。いかさまで樹立されたものは消されるべきですが、適正に樹立されたものは残るべきだと思います」とコメントした。

 一方、トンプソンの同胞のスプリンター、アサファ・パウエル(Asafa Powell)は白紙案を支持した。パウエルは2005年から08年にかけて男子100メートルの世界記録保持者だった。

「自分が面倒に巻き込まれないことを祈るけれど、私はすべきだと思う。賛成だ」

 他方、2003年の第9回世界陸上パリ大会(9th IAAF World Championships in Athletics Paris)で男子100メートルの金メダルを獲得したキム・コリンズ(Kim Colins、セントクリストファー・ネビス)は、記録はそのままであるべきだと主張した。

「記録は歴史の中で発生したことで、それを変更するというのは歴史の改編が必要になる。そういったことはかなり難しいことだと思う。私はそのままにすべきだと思う」

 世界記録の白紙案は8月に開催されるIAAFの理事会に提出される予定となっているが、最終決定が下される時期は未定となっている。(c)AFP