【4月29日 AFP】29日に開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で議長国フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領が、領有権争いが激しい南シナ海(South China Sea)での中国の拡張政策に対するASEAN諸国の抵抗を抑制しようと試み、各国首脳から反発を受けた。複数の外交官が明らかにした。

 戦略的重要水路である南シナ海に対する中国の全面的な主権主張に対し、国際裁判所はこれを認めない判断を下しているが、今回のASEAN首脳会議はこの判断については取り上げない意向を示している。

 首脳会議閉幕の際に議長声明を発表するドゥテルテ大統領は会議に先立ち、フィリピンを含むASEAN諸国は南シナ海での中国の人工島建設を止めることができないのだから、これについて首脳会議のような外交行事の場で議論する意味はないと発言していた。

 同大統領は27日に報道陣に対し「それはもはや議題にはなり得ない。(中国は)もうそこにいるのだから。何もできないのに議論することに何の意味があるだろう」と語ったという。しかし、フィリピンに対する中国の強力なロビー活動に不満を持つ他のASEAN諸国は、議長声明の内容を強めることを求め、29日の首脳会議に至るまでの間、激しい議論が交わされたという。

 フィリピンに駐在するあるASEAN加盟国の外交官は、AFPに対し「ASEANが完全に中国の圧力に屈することなどあり得ない」と述べた。

 ドゥテルテ大統領は中国に圧力を加えるために国際裁判所の判断を用いることを断固として拒み、友好関係と数十億ドル規模の貿易や援助を追求している。

 議長声明は本来、全てのASEAN首脳の見解を反映していなければならないが、AFPが入手したドゥテルテ大統領の最終的な議長声明案は、(南シナ海情勢について)懸念を表明しているものの、国際裁判所の判断には言及せず、中国の名指しも避けている。(c)AFP/Martin ABBUGAO, Ayee MACARAIG