【4月29日 AFP】男子テニスの伝説的選手、イリ・ナスターゼ(Ilie Nastase)氏が28日、セレーナ・ウィリアムス(Serena Williams、米国)に向けた人種差別的発言と、国別対抗戦フェドカップ(Fed Cup)で退席処分を招いた問題発言について謝罪した。

 現在70歳のナスターゼ氏は、自身がルーマニアの監督を務めるフェドカップで英国のジョアンナ・コンタ(Johanna Konta)に暴言を浴びせ、涙を流させた言動に関しては「誇張されている」とした上で、「フェドカップ中の発言は、当然ながら多くの物議を醸している。ファンや記者、そして何より自分自身とテニス界を失望させてしまった」とフェイスブック(Facebook)で述べた。

 また、セレーナの妊娠に対し「(赤ん坊の)色はどんなだろうな。チョコレートミルクだな」とコメントした点に関しては、同選手のおなかに赤ちゃんがいる事実を初めて知ったことによる「無意識」の発言だったと説明した。

「私の発言に言い訳ができないことは重々承知している――試合の緊張感が頂点に達した場面でなければ、よくある私の見当違いの態度によるものでもないし、状況が不運な方向に悪化していたわけでもなかった」

「私の人生はこれまで通りテニスとファンにささげる。可能な限り、私の謝罪を受け入れていただければと願っている」

 先週21日にナスターゼ氏の口から飛び出した言葉は、四大大会(グランドスラム)通算23勝を誇るセレーナの怒りを生んだだけでなく、テニス界を超えて波紋を呼んだ。35歳のセレーナ本人は「私と生まれてくる子供にあのような差別発言を行い、私の仲間に対しても性差別をするイリ・ナスターゼ氏のような人々が社会に暮らしていることが分かり、失望している」とコメントしていた。

 さらに、セレーナに対する暴言の翌日に行われたフェドカップでは、主審に加え、英国のアン・ケタボング(Anne Keothavong)監督とエースのコンタを罵倒。グランドスラムで2度の優勝経験を誇るナスターゼ氏は、すでに結婚して身ごもっているケタボング監督にモーションをかけたとも報じられている。

 キャリア最盛期には、悪ふざけや短気な性格、プレーボーイとの評判を持っていたナスターゼ氏は、退席処分を命じられた後にもVIPラウンジに足を踏み入れ、最終的に国際テニス連盟(ITF)から会場への出入り禁止処分を科されていた。

「最初にラケットを手に取ったのは5歳の時だった。それ以来、私にとってテニスはスポーツや職業以上のものだった。テニスこそ私の人生であり、一個人としてだけではなく、プロとしてもほぼすべてのことを犠牲にしてきた」

「残念ながら70歳になった今、テニスが自分から遠ざかっていくという、望んだことがなければ、想像すらもしなかった問題に直面している。ここ数日間は、非常に厳しい時間を送っている」 (c)AFP/Anca TEODORESCU