【4月27日 AFP】人間は、生きている間に自然に爪痕を残すだけでなく、死後にも腐敗分解される遺体によって貴重な土壌の化学的性質を変化させると警告する研究報告が26日、オーストリアの首都ウィーン(Vienna)で開かれた欧州地球科学連合(EGU)総会で発表された。

 土葬や火葬された遺体からは、鉄、亜鉛、硫黄、カルシウム、リンなどが、後に農地、森林、公園などとして使われる可能性のある土地の土壌に浸出する。

 今回の最新研究によると、これらの元素類は必須栄養素ではあるものの、人間の葬儀の慣習によって、自然界全体に均一に分散されずに墓地に集中することになるという。

 このことは、動植物による最適な吸収量に対して過度に栄養素が集中している場所と、逆に栄養素が不足した状態の場所が生じる可能性があることを意味する。

 さらに、人間の遺体には、歯の詰め物に由来する水銀などの有害な元素も多く含まれている。

 今回の異色の研究に参加したチェコ生命科学大学(Czech University of Life Sciences)のラディスラフ・スメイダ(Ladislav Smejda)氏は「腐敗した遺体の化学的痕跡は、土壌中で非常に明確に識別できる場合が多い」と話す。また、これらの痕跡は、数百年から数千年の非常に長期にわたって残存するという。

 その影響は、埋葬される遺体が増えるにつれてますます顕著になり、「現在の観点ではそれほど問題にならないかもしれないが、世界的に人口が増加すれば、将来には差し迫った問題となる可能性がある」とスメイダ氏は指摘した。

 スメイダ氏と研究チームは、墓地や遺灰「散骨園」などの土壌化学組成を分析するために、蛍光X線分析を行った。