【4月25日 AFP】ノルウェー出身の画家、エドバルト・ムンク(Edvard Munch)の代表作「叫び(The Scream)」で描かれたサイケデリックな雲をめぐってはこれまで、精神的苦痛の隠喩、あるいは火山噴火の描写などと解釈されてきた──。しかし、新たにに発表された仮説によると、実際には、低温の高高度で形成されるめずらしい雲から着想を得た可能性があるという。

 同絵画は1893年に初めて発表された。作品には、恐怖におののくように両手で耳をふさぐ暗い色でデフォルメされた人物と、渦を巻くような赤みがかったオレンジ色の空が背景に描かれている。

 背景の空をめぐっては、2004年に火山を描いたとの説も出ているが、オーストリア首都ウィーン(Vienna)で開かれた欧州地球科学連合(European Geosciences UnionEGU)総会で24日に発表された研究は、ムンクがノルウェーの首都オスロ(Oslo)上空に浮かんだめずらしい「真珠母雲」を描いた可能性を指摘した。

 真珠母雲は、高度約20~30キロ付近で形成されるが、極度の低温という特殊な気象条件を必要とする。19世紀後半にオスロ付近で観測されたとの記録が残っており、2014年にも同国南東部で観測されている。その形状がムンク絵画のものに似ていたため、今回の研究につながった。

 ウィーンで報道陣の取材に応じたオスロ大学(University of Oslo)の研究者、ヘレン・ムリ(Helene Muri)氏は「他にも仮説は存在する。心理学者らは、ムンクの『叫び』に精神的苦痛を見るが、われわれ自然科学者は自然の中に答えを求める傾向がある」とコメントした。(c)AFP/Mariëtte Le Roux