■怠惰への報酬?

 2009年、ドイツ議会は全国民向け所得保障を求めるドイツ国民約5万人の署名を断固はねつけた。だが世論調査会社エムニド(Emnid)が昨年6月に行った調査では、世論の40%が依然、全国民向け所得保障は良い構想だと考えていた。

 UBIの支持者らは9月の議会選を視野に入れ、「ベーシックインカム同盟(Buendnis Grundeinkommen)」という運動組織を立ち上げたが、これまでのところその主張を取り上げようとする主流政党はない。

 左派、右派、カトリック組織、企業リーダーなどに、UBIの支持派は散っている。支持の理由は貧困の克服から、お役所仕事の簡素化、デジタル時代への移行の円滑化などさまざまだ。

 一方、UBIに抵抗する考えの方により焦点が当たっている。こちらは特にUBIがもたらす人と仕事の関係の変化を指摘している。右派はUBIは「怠惰への報酬」だとして取り合わず、社会民主党(SPD)も2006年、失業者が受給すれば職探しをしない「役立たずのレッテル」を貼ることになると懸念を示した。

「仕事の未来のためのボン・センター(IZA)」のベルナー・アイヒホルスト(Werner Eichhorst)氏は2013年、「ごみを収集したり、高齢者の世話をしたりといった、大変で時にあまり魅力のない仕事を誰がやるようになるのか?」と問いかけた。

 UBI賛成派は、そうした仕事は将来ロボットが担うか、UBIが政策として導入されれば名誉のある仕事として社会の中で新たな位置付けが与えられるだろうと主張する。

 アイフホルスト氏や反対派は「私たちの代わりに働いてくれ、同時に税金も払ってくれる機械などないだろう」と反論する。(c)AFP/Coralie FEBVRE