【4月20日 AFP】ヒトの臍帯(さいたい)血に含まれるタンパク質を高齢のマウスに投与した実験の結果、高齢者の脳の健康維持に効果をもたらす新薬を開発するための「標的」が明らかになったとする研究論文が19日、英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された。

 注目を集めているタンパク質「TIMP2」には、これまでの研究で、記憶の処理や空間認知能力に関わる海馬の働きを向上させる働きがあることが分かっている。

 米カリフォルニア(California)州スタンフォード大学(Stanford University)のトニー・ウィスコレー(Tony Wyss-Coray)氏率いる研究チームは、高齢のマウスにTIMP2を投与する実験を行った。

 その結果、マウスの海馬内の活動が活発になり、学習能力や記憶、新たな情報への適応能力のすべてが向上。とりわけ迷路から脱出する能力に高い効果がみられた。

 研究チームは今回発表した論文で、TIMP2、または同タンパク質の作用を受ける脳細胞は、高齢者の認知機能低下を予防する薬剤を開発する上で有用な標的となり得ると主張している。

 一方、外部の専門家らは、今回の発見は非常に面白いが、十分に慎重を期する必要があるとしている。

 また、アルツハイマー病の専門家らは、マウスを使った今回の実験は、加齢に伴って自然に生じる認知機能の低下を対象としており、病気に起因する認知症はプロセスが異なると述べている。(c)AFP