■大きな問題

 フランスの高名な研究機関、高等研究実習院(Ecole Pratique des Hautes Etudes)で上級講師を務めるマギー・ニュグ(Maggy Nugues)氏は、2016年5月に同国を出発したタラ号の船上でAFPの取材に応じ「20年間にわたってサンゴを調査しているが、大規模なサンゴの減少を目の当たりにしている」と語った。

 そして「カリブ海(Caribbean Sea)と太平洋(Pacific Ocean)のサンゴの面積は、50~80%の減少がみられる。これは大きな問題」と続けた。

 タラ号に乗船している6人の研究者らは、式根島の一角にある、酸性化の進行した環境において、サンゴ、プランクトン、海藻、魚などを含む海中の生態系がどのようにして存続しているかを調べたいとしている。

 式根島のほとんどは酸性化されておらず、pHの高い環境が保たれている。そのような海域では、サンゴの状態ははるかに良好であることが示唆されている。

 アゴスティーニ助教は「日本近海のような比較的高緯度の海域が、温暖化の進行下における海洋生物の避難所として機能することを期待している」と述べるも、「生物の避難所が、酸性化によって限定化される可能性がある」ことを指摘し、「酸性化の影響を観察できる自然の実験室となる式根島の海で、その答えを見つけたい」とした。

 他方で、気候変動のペースが人的活動によって加速されると、生物はそれに合わせて適応するのが難しくなるとニュグ氏は指摘する。

「地球がこれまで比較的安定な条件の下で進化してきたことが、生物や動物の適応を可能にしてきた」「だが今や、人類がそのペースを、おそらく自然の速度計を振り切る速さにまだ加速させている」と現在の状況を説明した。