【4月18日 AFP】世界自然保護基金(WWF)は17日、絶滅危惧種を含む生物種の密猟や密漁、違法な伐採が、手厚い保護下にある世界の自然遺産の半数近くで行われているとする報告書を発表した。

 オーストラリアのグレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)やコンゴのビルンガ国立公園(Virunga National Park)、ガラパゴス諸島(Galapagos Islands)など、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界自然遺産(World Heritage)では、希少な生物種の個体群が多数生息している。

 しかしWWFの報告によると、全世界に200以上あるこれら自然遺産の45%では、ワシントン条約(CITES)で指定されている生物種が、違法な伐採や密売の脅威に直面しているという。

■絶滅寸前

 WWFは、こうした場所での違法な活動について「絶滅危惧種を絶滅寸前まで追い込むもの」と危機感を募らせている。

 WWFの野生生物保護対策責任者のコールマン・オクリオダイン(Colman O'Criodain)氏はAFPの取材に、世界自然遺産において最大の危機に瀕している生物種は、カリフォルニア湾(Gulf of California)に生息する世界最小のイルカ、コガシラネズミイルカだと述べた。

 同氏は、現状のままだと、この小さなイルカが1年以内に絶滅する可能性もあると指摘する。コガシラネズミイルカは、密漁の対象ではないが、同じく絶滅が危惧され、中国の闇市場で取引されているトトアバの漁の影響によってその生息数が激減している。

 オクリオダイン氏は、世界で最も保護されるべきこうした場所で違法行為が行われていることに「二重の憤り」を覚えると話す。「われわれが話しているのは、非常に象徴的な生物種であり、これらは世界的に象徴的な場所だ」と述べ、違法行為を撲滅するために国家レベル、国際レベルでのさらなる努力を求めた。

 しかし、野生生物の違法取引撲滅は、そう簡単ではない。国連(UN)のデータによると、その取引額は年間150億~200億ドル(約1兆6300億~2兆1800億円)に上るとされており、世界で違法に取引される対象としては、麻薬や偽造品、人身売買に次いで4番目に多い。

 また熱帯地域の主要国では、森林破壊の最大90%が木材の違法取引に起因するもので、年間300億~1000億ドル(約3兆2700億~10兆9000億円)で取引されているという。

 こうした場所での密猟や密売は、種だけでなく、現地での暮らしや観光業全体にとっても脅威だ。

 アフリカでは、ゾウの密猟による観光への打撃によって、年間最大2500万ドル(約27億円)の損失が生じていると推定されている。他方でマダガスカルでも、ローズウッドの違法な取引によって、2年間で最大2億ドル(約218億円)の損失が出ているとされた。(c)AFP/Nina LARSON