■虐待の「自由裁量権」付与に?

 2006年12月、当時のフェリペ・カルデロン(Felipe Calderon)大統領は、麻薬撲滅戦争に乗り出そうと軍を投入。警察は腐敗しきっていて不適任であり、浄化が必要だという考えだった。

 以来、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)をはじめとする非政府組織が、メキシコにおける類似の拷問や虐待の数々を記録してきた。

 今日、犯罪対策支援で全土に配備されている兵士数は5万人以上に上る。

 審議中の国内治安法案に反対している団体は、可決されれば軍内の凶悪分子に虐待を行う「自由裁量権」を付与することにつながるのではと危惧している。

 ただこの法案についてはあまりに多くの問題点が指摘されており、今月30日に閉会する今会期中の成立はないという見方が強い。

 拷問疑惑を突き付けられた軍はこれに反論。人権部門の長を務めるホセ・カルロス・ベルトラン(Jose Carlos Beltran)大将は先月、「組織的な人権侵害には及んでいないと」と断言した。

 また国防省のアレハンドロ・ラモス(Alejandro Ramos)法務部長は、軍部隊は警察業務に「違和感」を覚えていると認めている。