■不安を象徴する医療

 地方の住民が抱える不安の象徴となっているのが医師不足だ。

 バルジー村が位置するニエーブル(Nievre)県では2007年以降、一般開業医の4分の1が廃業。地理的に孤立しているのに診療件数が多いことから医師らに愛想を尽かされ、若い医師を誘致するのに苦労してきた。

 バルジー村の一般開業医の数は10年前の4人から2人に減少した。患者たちはまた眼科や婦人科といった専門医にかかるときも、待ち時間が長いと不満を訴えている。

 がっちりした体格の退役兵、アントワーヌさん(52)は今は警備員をしているが、4か月待ちと言われて心臓の具合が悪いのを専門医に診てもらうのをあきらめた。「政治家は国民の生活の現状が分かってない。国民は適切な医療を受けられていない」という。「フランスには医師がいないだけじゃない。本物の政治家もいない」と語ったアントワーヌさんは、独立系候補のマクロン前経済相には「先見の明」があるとして、今のところ支持しているという。