【4月7日 AFPBB News】 光とガラス、緻密な手業から紡ぎだされる壮大な一枚絵、ステンドグラス──。教会や洋館など使われているイメージが強いが、明治時代に日本に伝わって以来、欄間(らんま)や小窓など「和」の建築物にも取り入れられてきた。寺院も例外ではない。ハスの花などのシンボルマークから釈迦(しゃか)そのものまで様々な題材を、光が宿るステンドグラス特有の神々しさで描き出している。

 仏教の空想上の花、宝相華(ほうそうげ)の文様入りステンドグラスをはめ込んだ天井から、淡い光が大日如来像に注ぐ。年間1000万人以上が参拝する千葉県の成田山新勝寺(Naritasan Shinshoji Temple)境内にある高さ58メートルの「平和の大塔」最上階では、5体の仏像と天井のステンドグラスで「金剛界曼荼羅(まんだら)」の世界を表現している。

 新勝寺企画調整課の鈴木照密(Shomitsu Suzuki)さん(32)によると、1984年に完成した大塔を設計する際、「荘厳さ、豪華さを表すのに適している」としてステンドグラスが採用されたという。最上階の入室を信徒に限定していることもあり、神秘的な空間で静かに過ごす人も多い。

 釈迦そのものを描いたステンドグラスを取り入れている寺院もある。神奈川県の川崎大師平間寺(Kawasaki Daishi Heikenji Temple)信徒会館には、釈迦が悟りを開く成道(じょうどう)図、入定する涅槃(ねはん)図など、3点が約20メートルにわたり飾られている。ガラスの上に精緻な絵付けが施され、1973年の完成以来多くの参拝者を魅了してきた。

 千葉県船橋市の萬徳院釈迦寺(Mantokuin Shakaji Temple)でもこれらの作品に触発され、ステンドグラスを多用し、若い世代が来やすい寺院作りを目指している。夏休み中の子どもたちを対象にした合宿行事でも、釈迦の生涯を説明するのに効果的だという。また、大本堂のステンドグラスに仏を描いた際は、仏像同様に「魂を入れる開眼法要」が行われた。総住職の竹田明秀(Myoshu Takeda)さん(56)は「(ステンドグラスを通して)太陽の光が、仏様の後光として皆さんにあたるようになっている」と話す。

 新勝寺や釈迦寺のステンドグラスを作った東京都江東区の松本ステインドグラス製作所(Matsumoto Stainedglass)の松本一郎(Ichiro Matsumoto)さん(42)によると、宗教画は場面ごとに重要な物語やメッセージがあり、特に仏画は手の組み方が幾通りもあるため、デザイン前には入念な打ち合わせを行うという。

 松本さんは、明治時代に日本にステンドグラス技法を持ち込んだ宇野澤辰雄(Tatsuo Unosawa)のもとで修業した祖父を持つ、3代目。ステンドグラスは、集会場や公共施設など人が集う場に設置されることが多いため、安全性や、耐久性を追求し、技術や材料も改良を重ねてきた。「ステンドグラスは150、200年と持つと思う。デザインと使うガラスによって”和”にもなるので、どんどん使ってほしい」と話した。(c)AFPBB News/Yoko Akiyoshi