【4月3日 AFP】仏教の最高指導者の1人とされる地位をめぐり、長らく論争の渦中に置かれてきたチベット仏教の高僧がその僧位を捨て、インドで幼なじみの女性と結婚する道を選んだ。

 タエ・ドルジェ(Thaye Dorje)師(33)は幼少のころから、チベット仏教4大宗派の一つ、カルマ・カギュ(Karma Kagyu)派の教主、カルマパ(Karmapa)が転生した活仏(化身ラマ)であると主張してきた。しかしカルマ・カギュ派の多くの信者は、ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世が認めたウゲン・ティンレー(Urgyen Trinley)師をカルマパ17世と信じて従っている。

 2人のカルマパ17世をめぐる論争は長年チベット仏教を分断してきたが、タエ・ドルジェ師の執務室は、同師が先月25日にニューデリー(New Delhi)で身内だけで結婚式を挙げ、僧位を捨てたとする驚くべき声明を同30日に発表した。

 声明の中でタエ・ドルジェ師は「結婚するという私の決断が、私自身だけではなく、名跡にも良い影響をもたらすという思いを強く、心の底から抱いている」「私たち全員にとって美しい何か、ためになる何かが現われるだろう」と述べている。また同師は世界をまわって説法を行うといった活動は継続するとしている。

 結婚相手のリンチェン・ヤンゾム(Rinchen Yangzom)さん(36)はブータン生まれで、インドと欧州で教育を受けた。

 チベット仏教の伝統では最高指導者が亡くなると、その転生を示すしるしをもつ少年を高僧たちが探し出す。タエ・ドルジェ師はチベットで、やはり高僧だった父親と、貴族の家系を出自とする母親の下に生まれた。公式発表によれば、自分がカルマパであると周囲に語り始めたのはわずか1歳半のころだったという。(c)AFP