■フィリピンにとっての「ストレステスト」

 ドゥテルテ大統領は改憲によって連邦制に移行し、フィリピンの民主制を根本から再編しようとしている。同氏は首都マニラを腐敗したエリートが巣くう「帝国マニラ」と表現し、その不正に終止符を打つ方法として改憲を推進しようとしている。これもトランプ米大統領が、首都ワシントン(Washington D.C.)を「底さらいすべき沼」にたとえているのと同様だ。

 ドゥテルテ大統領に批判的な反対派は、現在1期6年に限定されている大統領任期が改憲によって変更され、独裁的支配を固定させるのではないかと恐れている。

 さらにドゥテルテ大統領は、軍と警察を合体させて反対派弾圧の先鋒となったマルコス独裁下の「警察軍」や、大統領の命令により令状なしで治安部隊に捜索・逮捕を許可する同じくマルコス時代の制度の復活を叫んでいる。そして令状なし逮捕に言及した際には、はっきりと「マルコス氏のように」と言っている。

 マニラのアテネオ・デ・マニラ大学 (Ateneo de Manila University)政治学大学院長ロナルド・メンドーサ(Ronald Mendoza)氏は、ドゥテルテ大統領の独裁的な統治スタイルはフィリピンの民主制にとって「ストレステスト」となり、それによって、まだ若い民主主義の弱点があぶり出されると指摘する。同氏が弱点とみなすのは、議会と警察だ。両者ともドゥテルテ政権下で脆弱さを露呈している。

 ただし同氏はこのテストは、強固な制度がプレッシャーに耐え得ることの証明にもなり、ポジティブな結果が得られるだろうと主張する。メンドーサ氏はポジティブな面の例として、ドゥテルテ氏が戒厳令をちらつかせた際に、国軍が声明でその必要はないと応じたことを挙げた。また軍は、警察とともに麻薬戦争の最前線に立つよう求めたドゥテルテ氏の再三の要求もはねつけている。

 さらにメンドーサ氏は独立性が保障されている中央銀行を、ディオクノ氏はメディアを、民主主義の重要な防波堤として挙げた。メンドーサ氏は「私たちは数十年前よりも、ずっと強い立場にある」と述べた。(c)AFP/Karl MALAKUNAS