■「試合がより公正なものになる」

 試合会場のスタッド・ド・フランス(Stade de France)を訪れた8万人の観客は、スロー映像をスクリーンで確認することができず、審判がビデオ判定を求める腕のジェスチャーを見つめるだけだった。

 元審判員のブルーノ・デリアン(Bruno Derrien)氏は、ビデオ判定について言及し、「試合から人間性が奪われ、魅力が減少する」と語っている。

「サッカーは感情のスポーツだ。不公平感も含めてね。ビデオはアシスタントレフェリーの責任を奪う。私がアシスタントを務めることになれば、オフサイドの旗を上げることはしない。ビデオがすべてを決めてしまうのだから」

 国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ(Gianni Infantino)会長が導入に前向きのビデオ判定は、2012年のクラブW杯(2012 FIFA Club World Cup)で初めて採用され、当時は得点の場面でボールがゴールラインを完全に割っていたかどうかを見極めるために使用された。

 関係者は、クリケットやアメリカンフットボールに比べ、サッカーで新たなテクノロジーが浸透するには時間を要するとの見解を示している。

 フランスサッカー連盟(FFF)のパスカル・カリビアン(Pascal Caribian)審判部長は、ビデオ判定の導入を早まるべきではないとしており、「判断するまでに数多くの試合で試験することが不可欠だ」として、来年のW杯での導入に向け試験をしている段階だと述べた。

 元クロアチア代表でFIFAの理事を務めるズボニミール・ボバン(Zvonimir Boban)氏は、28日の親善試合のような注目度が高いカードは、ビデオ判定の精度を上げる大きなチャンスだったと話している。

「テストが成功してとても満足している。これからもテストを重ねるが、今回のようにポジティブな結果にならない可能性もある」

「フランスで行われたテストは、ビデオ・アシスタント・レフェリーの使用によって試合がより公正なものになることを再び示した。これがわれわれの求めている成果だ」(c)AFP/Yann BERNAL