【3月28日 AFP】韓国で2014年に300人以上の死者・行方不明者を出した旅客船セウォル(Sewol)号沈没事故は、現場付近の商業にも大きな打撃を与えた。だが先日船体の引き揚げ作業が完了したことによって、経営者らは、自分たちにも運が向いてくるのではないかと期待を寄せている。

 セウォル号が沈没したのは、韓国南西部沖合の群島のある海域。ここには1700の島々が点在しており、同国最大の海上国立公園である多島海海上国立公園(Dadohaehaesang National Park)に指定されている。岩肌の多い島々が点在し、このうち大きめの島にはビーチやハイキングコース、海に面した宿泊施設などが整備されている他、寺院があり、祭りなども行われている。

 沈没現場に最も近い大きな島、珍島(Jindo)の南側にある港ではかつて、海上に出る釣り客や観光客のためにモーターボートがチャーターされていた。だが今ではモーターボートは桟橋に係留されたままで、所有者らは近くで暇そうに座っている。ある船長によれば、主な顧客だった釣り客らがこの海域を避けるようになったため、客足は半減したという。

 船長は、「釣り客らはここを悪魔の海域と呼んでいる」と語った。「大勢の若者の命が失われ、雰囲気も荒涼としている」

 取れたての魚介類も、かつてはこの地域の名産の一つだったが、事故によって需要は壊滅的に落ち込んだ。

 セウォル号沈没事故は、韓国史上最悪規模の海洋事故で、犠牲者の大半は高校生だった。

 事故は大きな論争を巻き起こし、最終的に捜査チームは、事故原因は人為的な要因が大きく、違法な船体改造や貨物の過積載、乗組員の経験不足、セウォル号の運航会社と規制当局との癒着関係などと結論付けた。

 地元当局者のチェ・ミヌ(Choi Min-Woo)氏によると、最近では一時期よりも観光客も増え、その数は毎週末100人を超えるという。しかし、こうした人々は、ペンモクギル(Paengmok)の神社で犠牲者に手を合わせると、地域に滞在せずに立ち去ってしまう。