【3月22日 AFP】オーストラリアGP(Australian Grand Prix 2017)で開幕する2017年シーズンのフォーミュラワン(F1、F1世界選手権)は、米国企業という新オーナーを迎え、長く待ち望まれたルール改正と高速化が実現したことで、未知の領域に入ろうとしている。

 F1界では昨季終了後、米リバティメディア(Liberty Media)による買収が完了し、F1の商業面を長年にわたり統括してきたバーニー・エクレストン(Bernie Ecclestone)氏が一線を退いた。それと同時に、技術面の規制が全面的に見直され、今までよりも「大きくて速い」マシンが実現した。

 タイヤが大きくなり、今までよりもマシンが幅広になったことで、ドライバーにかかる肉体的な負担は増すが、同時に車から出るエンジンサウンドも大きくなり、追い抜きの多い盛り上がるレース展開の増加が期待されている。F1はそうした点をアピールポイントにし、世界中の若いファン、デジタルメディアやソーシャルメディアに親しんだ世代を取り込みたいと考えている。

 昨季の年間王者に輝いたメルセデスAMG(Mercedes AMG)のニコ・ロズベルグ(Nico Rosberg)が引退したことで、ドライバーの移動が起こり、メルセデスは年間優勝3回の実績を持ち、今季も優勝候補の最右翼とみられるルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)のパートナーとして、ウィリアムズ(Williams)からバルテリ・ボッタス(Valtteri Bottas)を引き抜いた。

 その他にも、このオフには各チームで無数の動きがあり、今季のF1は展開の読めない、冒険的要素の強いシーズンになりそうな雰囲気を醸し出している。開幕前の合同テストで好タイムを記録したフェラーリ(Ferrari)が、レッドブル(Red Bull)とともに、ここ数シーズン圧倒的な強さを誇ったメルセデスの対抗馬になる可能性もある。

 リバティメディアはすでに規制を緩め、テスト期間中は、パドックの様子をSNSでライブストリーミング配信することを認めた。同社は今後も大きな改革を実行すると約束し、40年間の体制で染み付いたエクレストン色を払拭(ふっしょく)する意向を示している。

 苦戦が続くマクラーレン・ホンダ(McLaren Honda)は、「レトロな」方向へとかじを切り、シャシー名を変更するとともに、カラーリングを鮮やかなオレンジに戻した。フォースインディア(Force India)がピンクのカラーリングという大胆な装いを採用したことも、新たな時代の幕開けという印象を強める要因となっている。

 そうした表面的な変化の裏には、古くからある不安がくすぶっている。F1がもっと面白いレースを提供し、興行面で大きく成長しない限り、ゆるやかながらもファン層の縮小は止まらず、デジタル化以後のスポーツメディアの新時代で、激しいグローバル競争を生き残ることもできないという静かな警告は、今も消えていない。