【3月21日 AFP】英国の覆面グラフィティアーティスト、バンクシー(Banksy)が約2週間前にイスラエルの分離壁の近くにオープンさせたホテルが20日、最初の宿泊客を迎えた。

 パレスチナ自治区ベツレヘム(Bethlehem)に立つ「ウォールド・オフ・ホテル(The Walled Off Hotel)」は、イスラエルとパレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)を分断する壁からわずか4メートルの距離にあり、ホテルの全室から分離壁を見渡すことができる。

 9つの客室についてバンクシーは「世界のあらゆるホテルの中でも最悪の眺めだ」と表現している。宿泊費は、ワンルームの2段ベッドが30ドル(約3400円)。その一方で、1泊965ドル(約10万9000円)のプレジデンシャルスイートもある。

 ホテル内の壁にはバンクシーの新作数十点が展示されており、宿泊客は盗難防止のため1000ドル(約11万円)のデポジットをフロントに預ける。

 20日午後に到着した宿泊客の一人で、このホテルに宿泊するためだけに英ブリストル(Bristol)から飛行機でやってきたというポール・スミスさんは、「絵の中にいるみたいで変な気分だ」と感想を述べた。バンクシーもブリストル出身と言われている。

 スミスさんは、バンクシーの新作にはそれほど興味を示さなかったが、このプロジェクトにはわくわくするとコメント。「ここに来て尽力し、(地域)経済に幾らかでも貢献することには意味があると思う」と語った。

 支配人のウィサム・サルサー(Wissam Salsaa)氏によると、予約は3か月先までほぼ満室だという。当日の利用状況については「6か国の宿泊客が、ここに泊る目的のためだけに飛行機でやってくる」と述べた。

 宿泊費をめぐっては、パレスチナ人の大半には手が届かない高額と批判されているが、サルサー氏は、従業員が50人近くおり、コミュニティーに何らかの利益が還元されるとしてこれを一蹴。「訪れる人全員が、パレスチナ人の声を届けることができる最も素晴らしいプロジェクトだと話している」と続けた。