【3月11日 AFP】ドイツ連邦参議院(上院)は10日、北アフリカの3か国を難民法における「安全な出身国」と宣言する法案を否決した。不法移民流入の抑制を目指すアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)政権とって打撃となった。

 この法案はアルジェリア、チュニジア、モロッコの3か国を、それぞれの政府による反体制派への組織的迫害が行われていない「安全な出身国」と見なすことで、これらの国の出身者の難民申請をドイツ政府が容易に却下できるようにするとともに、これらの国の国民が将来、不法移民として欧州連合(EU)に来ることを防ぐ狙いがあった。

 しかしこの法案は同性愛者の処遇をはじめとする3か国の人権状況に懸念の声を上げてきた左派の「緑の党(Greens)」と「左派党(Die Linke)」の反対によって阻止された。

 トマス・デメジエール(Thomas de Maiziere)内相は「不法移民の流入阻止を目指すわれわれの試みにとって悪い日だ」と述べ、法案否決は今年9月の連邦議会選をにらんだ党派政治によるものとしか説明できないと指摘し、「特に緑の党に責任がある」と非難した。

 一方で難民支援団体「プロ・アジール(Pro Asyl)」は迅速な難民申請の却下を可能とするこの法案の否決を歓迎し、難民申請は個別の案件ごとに熟慮されるべきで、不認定となった場合は再審査のチャンスも与えられるべきだと述べた。(c)AFP