【3月11日 AFP】巨匠レオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci)の代表作「モナリザ(Mona Lisa)」が見せる有名なほほ笑みは、しばしば意味深長と評され、数世紀にわたり調査や議論の対象となってきた。だが、この表情の意味を読み取ることは、実はそこまで難しくなかったようだ。

 モナリザの微笑を見た人々のほぼ全員が、明確な「喜び」の感情を読み取ったとの実験結果が10日、発表された。研究に参加した独フライブルク大学(University of Freiburg)の脳科学者ユルゲン・コルンマイヤー(Juergen Kornmeier)氏はAFPに対し、実験結果について「われわれは本当に驚いた」と語っている。

 モナリザの表情は謎めいた感情の象徴とされ、多くの人にとって最初は優しい笑顔に見えるものの、長く鑑賞すればするほど、あざけりや悲しみの表情にも見えてくる。

 実験では、作品を白黒にコピーし、モナリザの口角を上下に調整した画像を計8種類作成。うち4枚は原画より幸せそうな顔に、もう4枚は悲しそうな顔に変え、原画を加えた9枚の画像を12人の被験者に30回見せた。

 被験者は各回で、画像9枚を無作為な順序で見せられ、モナリザの表情が喜びと悲しみのどちらを表現しているのかとの質問に答えた。

 コルンマイヤー氏は「美術界と美術史での説明に鑑みて、最も(表情が)曖昧なのは原画だと考えていた」が、その予想は外れ、被験者は97%の確率でダビンチの原画を喜びの表情として受け止めたという。

■精神障害研究の一助にも

 実験の第2段階では、モナリザの原画と、口角を第1段階よりもさらに細かい単位で「悲しげ」に変えた画像8枚を使用。この実験でも、被験者は原画を喜びの表情と受け止めた。だが一方で他の画像への認識に変化がみられ、第1段階よりも「表情が少し悲しげだと認識された」という。

 コルンマイヤー氏はこの実験により、「私たちの脳には喜びや悲しみを計る絶対的な尺度はなく、多くは文脈に頼っている」ことが分かったと説明。この過程を理解することで、精神障害の研究に役立つ可能性があると述べている。

 研究チームは今回の実験によって、モナリザをめぐる数世紀にわたる疑問をついに解決したと考えている。

 コルンマイヤー氏は「他の部分については曖昧さがあるかもしれない」ものの、「喜びか悲しみのどちらかという点については、曖昧さはなくなった」と語った。(c)AFP/Mariëtte Le Roux