【3月8日 AFP】国際サッカー連盟(FIFA)で初の女性事務総長に就任したファトマ・サムラ(Fatma Samoura)氏が、男性中心のサッカー界の姿に疑問を投げかけている。サムラ氏は、男子のW杯で集めた資金に頼らなければならない状況は屈辱だと話し、女子サッカーのさらなる発展に意欲を見せている。

 セネガル出身で、国連(UN)の外交官を務めた後、2016年6月からFIFAでジャンニ・インファンティーノ(Gianni Infantino)会長の右腕を担っているサムラ氏は、昨年カメルーンで行われた女子アフリカネイションズカップ(2016 Africa Women Cup of Nations)の観客数を引き合いに出し、変化を実感していると話した。

 世界女性デーを8日に控え、AFPのインタビューに応じたサムラ氏は、「アフリカでは普通、女子サッカーの試合には2000人も観客が入れば良い方です。ところがカメルーンでは毎試合少なくとも1万3000人の観客数がありました。これは驚くべきことです」と話した。

「今までサッカー界で肩身が狭かった女子サッカーが、新たな段階に入った証拠ですし、この流れが今後も続くと信じています。大切なのは、女子サッカーの認知度を高める活動に力を注ぎ、スポンサーを引き付けて、女子サッカーを独立したスポーツにすることです」

「現在、FIFAの大会はどれも男子W杯で集めた資金で運営されています。21世紀という時代に、世界の人間の半分は女性なのにもかかわらず、女子の活動が一つの大会に頼りきりになっている。これは受け入れがたいことです」

■目標は女子サッカー人口「6千万人」

 FIFAには現在、女子サッカーを専門に扱う部署があり、各国協会は女子サッカーの発展目標を定めた後、FIFAから助成金を交付されている。サムラ氏は、現在世界に約3000万人いる女子サッカーの登録人口を倍に増やすことを目指している。

「私たちは、女子サッカーの登録人口と競技人口を、2026年までに6000万人へ増やすことを目指しています。すでに期限まで10年を切りました。各国協会の努力なくして、目標到達はあり得ません」

 国連の食糧支援プログラムで経験を積み、55歳となったサムラ氏にとっても、醜聞にまみれたFIFAでナンバー2を務めるのはまったく新しい挑戦となる。サムラ氏は、FIFAでは敬意をもって扱われており、国連での経験を生かせる部分も多くあると話しつつ、自らに続く女性幹部がほかのスポーツでも出てきてほしいと続けた。

「FIFAは1904年に創設された組織ですが、それでも欧州外のムスリムの女がこのポストに就くのには112年の時を要しました。これは明らかにガラスの天井です。ですがこれは、サッカー界が開かれ、多様性が組織の上層部にも取り入れられつつあることを示す良い機会でもあります」

「障害に行き当たることはありますが、それは私が女だからではなく、周りが伝統をひっくり返されることに慣れていないからでしょう。サッカーの世界にも、私にとって大切なテーマがたくさんあります」

「私はこの20年、多様性、寛容さ、人権保護の大切さを毎日訴え続けてきました。サッカーの世界にも、政治の世界と同様、固定観念が間違いなくたくさん残っています。スポーツの世界には、私のような先例となる女性がもっともっと必要です」 (c)AFP/Eric BERNAUDEAU