【3月7日 AFP】今年の米アカデミー賞(Academy Awards)で黒人の俳優、脚本家らが複数受賞したことは、白人が圧倒的多数を占める米ハリウッド(Hollywood)が多様性の問題に真剣に取り組んでいるメッセージとして受け止められた。だがそれはあくまでも表面的な印象にすぎない。

 出演者や制作スタッフ、映画会社の経営陣の顔触れを見れば、女性はもちろん、アジア系やヒスパニック、その他のマイノリティー(少数派)の人々が依然として圧倒的に少ないこの業界で、この闘いはまだ始まったばかりと言えるだろう。

 昨年のアカデミー賞では、非白人俳優が2年連続で一人もノミネートされなかったことを受け、SNSではハッシュタグ「#OscarsSoWhite(オスカーは真っ白)」が広まった。しかし今年は、バリー・ジェンキンス(Barry Jenkins)監督作品『ムーンライト(Moonlight)』が、現代のアフリカ系米国人の若者の姿を鋭く描いているとして多くの共感を生み、作品賞を受賞。

 さらに、アフリカ系の俳優6人とアフリカ系米国人をテーマにしたドキュメンタリー3作品がノミネートされ、マハーシャラ・アリ(Mahershala Ali)が『ムーンライト』で助演男優賞、ヴィオラ・デイヴィス(Viola Davis)が『Fences(原題)』で助演女優賞、エズラ・エデルマン(Ezra Edelman)の『O.J.: Made in America(原題)』がドキュメンタリー長編賞、ジェンキンス監督とタレル・マクレイニー(Tarell McCraney)氏が『ムーンライト』で脚色賞を受賞した。

 しかし、人種の問題は単に黒人と白人の間だけにとどまらないと指摘する声もある。

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)が毎年発表している「ハリウッド多様性報告書(Hollywood Diversity Report)」を担当しているダーネル・ハント(Darnell Hunt)教授はAFPの取材に対し、アカデミー賞は近年、高まるプレッシャーの下でメンバー構成を多様化する改革に乗り出しており、こうしたメンバーらが人種的な偏りに自覚的になってきたようにも思われると前置きした上で、こう続けた。