【3月8日 AFP】バーチャルリアリティー(VR、仮想現実)用のヘッドセットといえば、ビデオゲームや遊びを連想しがちだが、恐怖症や依存症といった心の問題の治療での活用を目指す企業がある。

 恐怖症によっては、患者にその恐怖──クモ、飛行機、狭く閉鎖的な空間など──を少しずつ体験させることによって症状が改善することがある。疑似体験療法は、現実世界あるいは想像上の訓練を通して患者に恐怖を感じる状況を体験させるものだ。

 リトアニアのモバイルアプリ開発企業「テレソフタス(TeleSoftas)」は、VRのヘッドセットを使えば、安全な診察室でそうした疑似体験療法が行えると考えている。

「VRを使えば、安全な環境で音響と映像を使った恐怖症治療ができる」と、テレソフタスのアルギルダス・ストーニス(Algirdas Stonys)最高経営責任者(CEO)は、スペイン・バルセロナ(Barcelona)で開催された世界最大級のモバイル関連見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」でAFPに語った。

 例えば、人前で話すことを極端に苦手とする人が、聴衆が大勢集まったバーチャルな部屋にいる感覚を味わうことができる。

 テレソフタスはVRのヘッドセットを使ったメンタルヘルス用アプリの開発資金を欧州連合(EU)から調達したばかりだ。開発は研究者らの協力を得て行われる。

 強迫性障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、アルコール依存症、禁煙の治療におけるVRの活用も視野に入れているという。

 米国では、同社以外にも複数の新興企業が同様のアプリの開発に努めている。

 一方、スペインでは、新興企業「サイウス(Psious)」がVRを活用した心理療法アプリを開発している。同社は、創設者の一人が飛行機恐怖症だったのをきっかけに3年前に設立された。

 サイウスが開発しているアプリは、心理療法士向けのものだ。ダウンロードし、患者にVRで体験させる環境を選択して、ヘッドセットで再生する。