【3月3日 AFP】ケナガマンモスの絶滅に至る過程において、その生存能力を阻害する遺伝子変異が、減少する個体数の群れの中で次々と発生していたとする研究論文が2日、発表された。ケナガマンモスは数千年前に絶滅している。

 かつては北米やロシア・シベリア(Siberia)に最も多く生息していた草食動物の一種だったケナガマンモスは、狩猟による影響の増大や気候温暖化などの脅威にさらされ、3700年前に地球上から姿を消した。

 米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)の研究チームは今回、これまでに見つかった中で最後期のケナガマンモスと判明している個体の一つからゲノム(全遺伝情報)を採取し、これを分析した。この4300年前の標本は、シベリア北部沿岸沖のウランゲル島(Wrangel Island)で発見された。

 大陸で約1万年前にマンモスが絶滅した後も、ウランゲル島には約300頭が生息していたと考えられている。

 研究チームは、この標本の遺伝子を、それよりはるかに古い約4万5000年前の個体のものと比較した。この古い個体は、その数がはるかに多く、健全な個体群に属していた。

 比較分析の結果、島のマンモスは、大陸のマンモスに比べて、はるかに多くの有害な変異を持っていたことが分かった。大陸では、繁殖相手が豊富で多様性に富んでおり、個体群ははるかに健全な状態だった。

 研究チームが発見した、悪影響を及ぼす遺伝子変異の中には、消化器官の問題を引き起こしたと考えられるものも含まれていた。

 この他、マンモスの体を覆っていた体毛を、特有のゴワゴワした硬い毛から、よりなめらかで光沢のあるものに変えた可能性のある変異もあった。この変化によって、寒冷気温に対する耐性が低下したことが考えられるという。

 米オンライン科学誌「プロス・ジェネティクス(PLoS Genetics)」に掲載された研究論文によると、「島のマンモスは、においや尿タンパク質を感知する嗅覚受容体を多く失っていた。これは、個体の社会的地位や繁殖相手の選択に影響を及ぼす可能性がある」という。島のマンモスに起きたこのプロセスについて論文は「個体群の有効サイズ低下により生じたゲノムの破綻」と説明している。

 今回の研究結果は「個体群の規模が小さく、現在絶滅の危機にある生物種を保護するための継続的な取り組みに対する警告」になると論文は指摘している。

「個体群の規模が小さいことによる脅威」に直面している種としては、チーター、マウンテンゴリラ、パンダなどが挙げられる。こうした脅威によって、種自らの生存を脅かす遺伝子変異を克服することが、困難から不可能になる恐れもある。

 今回の研究論文は、「そのため、このような破綻の影響をうけたゲノムには、個体群の回復を妨げる継続的な余波が表れることも考えられる」と述べている。(c)AFP