■「極めて健康」でない人も

 ドイツ航空宇宙センター(DLR)の放射線生物学専門家、トマス・ベルガー(Thomas Berger)氏は、こうした短期間の旅行では宇宙放射線による被ばく線量は低いと考えられるが、「リスクがまったくないというわけではない」と指摘する。

 いわゆる「太陽プロトン現象」が起きると、エネルギーの高い陽子の量が突然増加するため、被ばくリスクが高まるというのだ。

 1972年に大規模な太陽プロトン現象が観測されている。当時、プロトン現象の発生をまたぐ形で2度のアポロ計画が実行されていたが、ミッション中に起きることがなかったため、飛行士が被ばくすることはなかった。

 他方でグラント氏は、これまで宇宙に送られてきたのは、数か月にわたる訓練と健康チェックを施された「極めて健康な人」ばかりだったと指摘する。「宇宙旅行では、健康でない人が宇宙に送られるケースもあるだろう。もし彼らが薬を服用していたり、病歴があったりする場合、宇宙でどのように反応するかは分からない。そうしたケースを過去に一度も経験していないためだ」と説明した。

 このような未知の領域についてベルガ―氏は、「もちろんいろいろなリスクがある」と述べた上で、「人々を怖がらせる必要はない。ただ、可能性のあるリスクについては周知させておく必要がある。最初に挙げられるのは、ロケットに乗ることのリスクだ」と語った。(c)AFP/Laurence COUSTAL / Mariëtte Le Roux