【2月27日 AFP】クロスカントリー初挑戦でノルディックスキー世界選手権(Nordic World Ski Championships)に出場するも、レース中に幾度となく尻もちをついて「世界で最も下手なスキーヤー」と評されたアドリアン・ソラーノ(Adrian Solano)が25日、母国ベネズエラに帰国した。

 同日夜、開催地フィンランドから故郷マラカイ(Maracay)に降り立ったソラーノは、AFPに対し「非常に大きな経験になった。自分があざけりの対象だったのは理解しているが、それでも誇りに思う」と話し、大会で見せた低いパフォーマンスにソーシャルメディア(SNS)上で批判が集まる中でも、平然とした姿勢を見せた。

 ソラーノが競技に臨む姿をとらえた動画では、スキー板に立つのもままならない様子が映し出され、「世界で最も下手なスキーヤー」という見出しで世界中から厳しい声を浴びた。悔しい結果に終わった22歳は「本当に緊張していた。コースに立てば後戻りはできない。前に進むしかなかった」と振り返った。

 これまでローラースキーで練習に励んでいたというソラーノは、世界選手権初登場となった22日の男子10キロクラシカルで、数回にわたって転倒を喫して途中棄権。さらに翌日の男子1.6キロスプリントフリーでは完走を果たすも、最下位に沈んでいた。

 大会前に雪上で練習を行うため、スウェーデンに向かおうとしたソラーノは、1月19日にトランジットで利用したフランス・パリ(Paris)の空港で強制送還されると、自身の計画は頓挫した。

 ソラーノによれば、フランス警察は自身がスキーヤーであることを信じなかったといい、現場に居合わせた同選手のトレーナーも、「警察は彼のことを笑った。ベネズエラにスキーは存在しないと言っていた」と当時の状況を説明していた。

 この一件は政治にも飛び火し、ベネズエラのデルシ・ロドリゲス(Delcy Rodriguez)外相は先日、ソラーノに対する扱いは「ベネズエラ出身スポーツ選手に対する侮辱」とし、フランス政府に「断固として抗議する」と怒りをあらわにしていた。

 一度ベネズエラに戻ることを余儀なくされたソラーノはその後、フィンランド出身の実業家男性がクラウドファンディングサイト「ゴー・ファンド・ミー(GoFundMe)」で自身2回目の遠征資金を募ってくれたという。

 今後も競技を続けるというソラーノは、「ロシア、ウクライナ、そしてポルトガルの人々からサポートを得た。信じられない。残念なことに、ベネズエラよりも多くの支援を受けた。ここでは、何もかもが政治的なものになってしまう」としたうえで、「自分のために一人で何かをやってやりたい」と語った。 (c)AFP