■「この店での経験を励みとして、キャリアを積んでもらいたい」

 友人と共に2度来店したという女性客(57)は、「コンセプトが素晴らしいと思う」「非常に不愉快な政治問題があるけれども、この店に来ることは、とてもささやかながら、自分にもできる有意義で建設的なこと」だと述べた。

 黒いヒジャブ(頭髪を覆い隠すスカーフ)を着用し、大学で生物学を学んでいるという女性(21)は、友人たちとほぼ毎日このカフェに立ち寄り、ここでコーヒーを飲むことで政治的な意思表明を行っているのだと語る。そして「私たちイスラム教徒はお互い助け合う必要がある。今は特に」「難民に関して正しい知識を身に付けていない人は多い。そういう人たちは難民を一般人ではなく、テロリストだと判断する」と指摘した。

 カフェの全従業員(現在は10人)は、コーヒーの入れ方の基礎やコーヒーの種類、接客マナーといったことを2週間の研修で学ぶ。難民たちにコーヒー業界で働くための糸口を提供し、第2の祖国で自立してもらうためだ。

「私たちは、再スタートを切ることを願いながらも学歴や職歴がない人たちに、ここでの経験を励みとして、素晴らしいキャリアを積んでもらいたいと思っています」とヒューイットさんは言う。

 従業員の中には、この地で新たな人生を送る中、自らが激しい論争の渦中にいることに気付いたときにこのカフェが希望を与えてくれたと話す人々もいる。

 医者を目指しているラナさん(18、仮名)は、2年前にシリアを逃れ両親、3人のきょうだいと共に米国にやって来た。トランプ政権の難民への風当たりを目にして困惑したと話す。「あの大統領令が出されてからはすごく怖かった」「米国に望まれていないのだとしたら、私たちは、どこに行けばいいのでしょうか」と問い掛けた。(c)AFP/Jocelyne ZABLIT