【2月17日 AFP】国際サッカー連盟(FIFA)は16日、認知症で死亡したサッカー選手に関する英大学の研究結果が発表されたことを受け、ヘディングが脳疾患のリスクを増加させる決定的な証拠は何もないと主張した。

 ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College LondonUCL)神経学研究所の専門家が出した提言に対し、FIFAの広報担当者は声明で、「われわれの知る限り、現在のところヘディングや脳振とうにつながるようなプレーによって、悪影響が出るという確固たる証拠はない。現役もしくは元サッカー選手を対象にした脳機能に関する研究は、まだ結論に達していない」と述べた。

 FIFAとしては、プロ選手について「幼少時代からのヘディングを含めて、あらゆるサッカー活動にさらされる機会が、娯楽としてサッカーをする人よりも多い」という認識を示しながらも、「幸運なことに、サッカーは脳や頭に損傷を被る高いリスクのあるスポーツではない」と強調した。

 UCLは国際科学雑誌「アクタ・ニューロパソロジカ(Acta Neuropathologica)」で、プロのサッカー選手は、ボクサーやアメリカンフットボール選手に多く見られる認知症を引き起こす脳疾患を発症するリスクが高いという研究結果を発表。

 幼少期や10代のころからサッカーを始めてヘディングをしていた認知症の元サッカー選手14人について検査を行ったところ、死体解剖を行った6人のうち、4人に慢性外傷性脳症(CTE)の兆候がみられたという。これは一般市民で見られる確率の平均12パーセントをはるかに超える数字となっており、元サッカー選手に関連した研究でCTEが確認されたのは、これが初めてのケースとなる。

 UCLで研究主任を務めるヘレン・リング(Helen Ling)氏は、「われわれの研究で、サッカーとCTEに因果関係がある可能性が示されている」としたうえで、「大規模な研究が必要であり、英国サッカー協会(FA)やFIFAなどプロ組織からの協力が不可欠だ」と語った。

 研究対象となった元選手は全員、1980年から2010年にかけて英ウェールズ(Wales)のスウォンジー(Swansea)にある精神科施設にカルテが存在し、14人のうち12人が重度の認知症で死亡したとされている。

 FIFAは、15年以上も前から「頭部や脳の損傷問題に取り組んでいるところ」であり、各国際スポーツ連盟や研究グループと協力しながら科学的な研究結果も発表していると強調。さらに、7歳から12歳までの子どもを対象としたある国際的な研究結果で、「ボールとの接触で脳振とうがみられたのは、プレー時間20万時間で1件だった」ことにも言及した。

 広報担当者は、「FIFAとして今後も頭部の損傷問題を監視し、研究機関との定期的な連絡を維持しながら、男女を問わずサッカー選手を対象に現在も進められている長期的な神経認知の変化を調べていく」という姿勢を示し、選手の健康が「サッカーを発展させるうえでの最優先事項」であると述べた。(c)AFP