【2月16日 AFP】長編小説「失われた時を求めて(In Search of Lost Time)」で知られるフランスの文豪、マルセル・プルースト(Marcel Proust)の姿を収めているとする映像をカナダ人研究者が発掘し、15日に仏誌のウェブサイトで公開された。プルーストの写真は何枚か現存するが、映像が見つかったのは初めてとしている。

 映像が撮影されたのは1904年11月14日でプルーストは当時33歳。1分11秒の無声の映像の中に、卵形の顔に細く黒い口ひげをたくわえたプルーストとみられる男性が数秒間映っている。

 映像はカナダのケベック(Quebec)州にあるラバル大学(Laval University)のジャンピエール・シロワトラン(Jean-Pierre Sirois-Trahan)教授が発見し、プルースト研究誌「ラ・ルビュ・デチュード・プルースティエンヌ(La Revue d'Etudes Proustiennes)」で発表した。「プルーストの姿を収めたフィルムが発見されたのは初めてとみられる」と説明している。

 映像はプルーストの親しい友人男性と、「失われた時を求めて」に登場するシャルリュス男爵のモデルとされるロベール・ド・モンテスキュー(Robert de Montesquiou)の大姪(おおめい)の結婚式の様子を映したもの。プルーストとされる人物は会場の教会の階段を駆け降りていく。

 映画を専門とするシロワトラン氏は、当時注目を集め、プルーストが招待客に含まれていたこの上流階級の結婚式に関する報道を詳しく調べた末、フィルムがパリ(Paris)近郊で保管されていることを突き止めた。

 映像に映っている貴族の男性がほぼ全員、黒いジャケットとシルクハットを着用しているのに対して、プルーストとされる男性はグレーの外套(がいとう)に黒い山高帽といういでたちで、独り足早に教会を去っていく。

 シロワトレハン氏は「プルーストにとっては、こうした身なりや所作が人目を引く優雅な方法だったのかもしれない」と指摘している。(c)AFP