■外の世界の厳しさ

 65歳以上の高齢者の再犯率は高い。政府によると高齢犯罪者の約70%が出所から5年以内に再犯で刑務所に戻るという。

 ニッセイ基礎研究所(NLI Research Institute)の土堤内昭雄(Akio Doteuchi)主任研究員は「再犯増加の背景には、高齢者の(経済的)自立の難しさがある」「社会復帰のための住居や職の確保などが非常に厳しい。また、一人暮らしが増え、高齢者の社会孤立が深まっている」と語った。

 府中刑務所は、出所日が近い受刑者らを対象に、就労支援の模擬面接や社会保障サービスについての講義を行っている。

 出所したばかりの元受刑者らを支援するための更生保護施設も設置されている。これらの施設では、一時的に住む場所や食事を提供している。

 東京にある両全会(Ryozenkai)はそのような更生保護施設の一つ。ここで実施されているのは、健康な高齢者を含む元受刑者を対象にした、パソコン教室や生活指導だ。約4か月の滞在期間で元受刑者らの自立を目指す。

 しかし小畑輝海(Terumi Obata)理事長は、4か月という期間は短すぎると指摘する。適切な支援が受けられなければ、出所から2年以内での再犯リスクが非常に高いと考えるためだ。

 小畑理事長は「経済的な安定、仕事の確保は一番重要なのは間違いない」「でも、人間的な人との関係をもてるような教育、いい人もいるんだと、そこから教えないと。彼らは人間不信にもなっている」としながら、生まれながらにして親に恵まれなかったり、虐待されたりと厳しい生育環境にあった人も中にはいると説明した。

 刑務所と社会との間の橋渡しをすることで状況は一変する可能性がある。

 殺人の罪で15年間服役していた60代の女性は「外の世界は厳しい」「社会は何もかも変わっている。たとえば、携帯電話にしろ、駅の改札にしろ」とAFPの取材に語った。

 それでもこの女性は、更生保護施設に入り清掃の仕事を手にした。人生の危機を乗り越え社会復帰できたと考えており、もう二度と刑務所には戻らないとの決意を固めた。そして「はやくもっと働けるようになって、遺族に給料が払えるようになりたい」と語った。(c)AFP/Natsuko FUKUE