【2月14日 AFP】米音楽界のスーパースター、ビヨンセ(Beyonce)は音楽業界にとっては時代の先を走り過ぎているのだろうか? それともグラミー賞(Grammy Awards)に人種的な偏りがあるのだろうか? 12日に米カリフォルニア(California)州ロサンゼルス(Los Angeles)で開催されたグラミー賞授賞式で、ビヨンセが主要部門での受賞を逃したことに多くのファンがいらだちを募らせている──そのうちの一人は主要3部門を制した英歌手のアデル(Adele)だ。

 ビヨンセのこれまでのアルバムの中で最も意欲的な一枚である「レモネード(Lemonade)」は、アフリカ系米国人の女性たちが逆境から立ち直る力をたたえた作品だ。9部門でノミネートされていたが、最終的には「最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム」など2冠にとどまった。

 一方で、大ヒットアルバム「25」と同収録曲で主要3部門「年間最優秀アルバム」「年間最優秀レコード」「年間最優秀楽曲」を2度制覇するという快挙を果たしたのはアデルだ。しかしアデル本人は、「レモネード」こそが受賞するべきだったと発言し、ビヨンセのファンから称賛を受けた。

 ロサンゼルスで行われた祝賀会に出席したアデルは報道陣に対し、「私の考えでは、彼女が年間最優秀アルバムを取るには、他に何をしなきゃいけないの?って感じ」とコメント。また、自らのアフリカ系の友人たちも「レモネード」に「励まされた」と言っていたとしながら、映像とパッケージにしたビヨンセの同アルバムの創作性を称賛し、「あの映像はとても斬新で、グラミー賞はとても伝統を重んじる。今年はそちらの流れに沿った年だったのかなと思う」と感想を述べた。

 昨年のグラミーでは、ヒップホップの記念碑的なアルバムとして評価されたケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)の「トゥ・ピンプ・ア・バタフライ(To Pimp A Butterfly)」が、最優秀アルバム賞の最有力候補だったが、結局選ばれたのは米ポップ歌手テイラー・スウィフト(Taylor Swift)のベストセラーアルバム「1989」だった。ラマーの同作品には、米国で黒人男性が警官に射殺された事件がきっかけとなった抗議運動「ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter、黒人の命は大切だ)」のアンセムとなった「オールライト(Alright)」が収録されている。