■苦味を甘味に

 人類は数千年前にアンデス山脈のチチカカ湖(Lake Titicaca)周辺の高原でキヌアの栽培を始めたが、その栽培規模は現在もあまり変わっていないと研究チームは指摘する。

 その他の主要作物では、収穫量の増加や、害虫や気候変動に対する耐性強化のための最善の特性の組み合わせを模索し、何世紀にもわたって交配が重ねられてきた。最近では遺伝子組み換えも行われている。

 しかし今回の成果により、今後はキヌアのゲノムレベルで取り組みも可能になった。「キヌアは、世界の食糧安全保障を向上させる大きな可能性を秘めている」とテスター教授は話す。

 テスター教授のチームは、サポニンの生成を調節するものなど複数の遺伝子をすでに特定している。これらの遺伝子は、品質や収穫量を向上させるために、交配や遺伝子編集を通じて改変できるかもしれない。

 論文の共同執筆者で、オランダ・ワーヘニンゲン大学(Wageningen University)研究センターの科学者のロバート・ファン・ルー(Robert van Loo)氏は「このようなキヌアDNAに関する情報があれば、品種改良の過程で、苦味物質を生成しない苗木を迅速かつ容易に選ぶことができる」と話す。

 南米の亜種は、遺伝子1個の改変で甘味を増すようにできる可能性が高いと、ルー氏は続けた。

 キヌアは、大部分がアンデス地方の3国、ペルー、エクアドル、ボリビアで栽培されている。キヌアの価格は需要の増加により近年、3倍近くに高騰している。(c)AFP/Marlowe HOOD