【2月5日 AFP】独週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)が4日、片手に米国の自由と移民の象徴である「自由の女神像(Statue of Liberty)」の首を、もう一方の手に血まみれのナイフを手にしたドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領を描いた表紙の号を発売し、議論を呼んでいる。

 この表紙にはキューバから米国に政治亡命したアーティスト、エーデル・ロドリゲス(Edel Rodriguez)氏が描いたトランプ氏のイラストが印刷され、その隣にはトランプ氏の支持者が使うスローガン「米国第一」と書かれている。

 シュピーゲルのクラウス・ブリンクボイマー(Klaus Brinkbaeumer)編集長は独DPA通信に対し「わが誌の表紙で米大統領が、1886年から自由と民主主義で米国への移民・難民を歓迎してきた象徴の首をはねている」と語った。

 このイラストのトランプ氏の顔はオレンジ色で、目と鼻は無く大きく開いた口だけが描かれている。この表紙にドイツをはじめとする各国のメディアが反応した。

 独タブロイド紙ビルト(Bild)は、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の英国人メンバーで「ジハーディ(聖戦士)・ジョン(Jihadi John)」の通称で呼ばれるモハメド・エムワジ(Mohammed Emwazi)容疑者に直接なぞらえた。エムワジ容疑者はISの人質斬首映像にたびたび登場している。

 欧州議会の副議長を務める独自由民主党(FDP)のアレクサンダー・グラフ・ランドルフ(Alexander Graf Lambsdorff)氏はビルトの取材に対し、トランプ氏のイラストを「悪趣味」「とてもたちの悪いやり方でテロ犠牲者の命をもてあそんでいる」と非難した。

 独日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(Frankfurter Allgemeine Zeitung)は「メディアがトランプ氏を悪者扱いすれば彼の思うつぼだ」と紙面で警鐘を鳴らし、こうしたイラストはトランプ氏の支持者に、メディアについて「トランプ氏に偏見を持っている」「トランプ氏が敵対しているとされる支配者層に属している」と信じる根拠を与える恐れがあると指摘した。

 このイラストはソーシャルメディアで広く共有され、首都ベルリン(Berlin)で4日に行われたトランプ大統領によるイスラム圏7か国の入国禁止令に対する抗議デモでは、このイラストを使用したポスターを掲げる参加者の姿も見られた。(c)AFP