【2月4日 AFP】一人の仕事人間が、数十年にわたり何度もチームを立て直し、世間から嫌われるほど長い王朝時代を築くという比類なき成功を収めている。米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)、ニューイングランド・ペイトリオッツ(New England Patriots)のビル・ベリチック(Bill Belichick)ヘッドコーチ(HC)が、サッカー界の名将アレックス・ファーガソン(Alex Ferguson)氏に例えられるのは、ほとんど不思議ではない。

 ベリチックHCはいつも気難しい様子で記者会見でも口数が少なく、ひたすらにトロフィーを追求する。その姿は、イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)を率いていたファーガソン元監督と非常に似通っている。

 ユナイテッドの本拠地オールド・トラフォード(Old Trafford)で27年間を過ごしたファーガソン氏と同様に、NFLで長期政権を握っているベリチックHCがペイトリオッツに加入した2000年以降、ライバルチームのHCは次々と現れては姿を消しており、過酷な仕事が要求されるNFL指揮官の在任期間は平均で約3年となっている。

 現在64歳のベリチックHCが、これほど長期間にわたり生き残っている理由は、その驚異的な成績に集約されている。第51回スーパーボウル(Super Bowl LI)でアトランタ・ファルコンズ(Atlanta Falcons)と対戦するペイトリオッツは、ベリチックHCの下で計6回出場しているスーパーボウルで通算4度の優勝に加え、地区優勝14回という素晴らしい成績を収めている。

 サラリーキャップ制度の時代で優勝争いに食い込むのが厳しくなり、NFLで一つのチームが圧倒的強さを発揮することが難しいなか、ペイトリオッツがここまで積み重ねてきた成績は奇跡に近いものがある。

 名将ビル・パーセルズ(Bill Parcells)氏が指揮官を務めていたニューヨーク・ジャイアンツ(New York Giants)時代に、当時アシスタントコーチだったベリチックHCと一緒だった経験がある元QBのフィル・シムズ(Phil Simms)氏は、すでにNFL史上最高の指導者だと評価しており、「彼が最も偉大かって?それに異議を唱える方法を知らない」と語った。

 ベリチックHCの指揮官としての哲学は、「攻撃は敵の守備の欠点を追及すること、守備は敵の攻撃の要を無力にすること」というシンプルな考え方に基づいている。それは、米海軍兵学校(US Naval Academy)でアシスタントコーチを務めていた1950年代に、スカウトティングに関する本を執筆した父親から学んだ基本原則だという。

 ベリチックHCの父が数多く執筆したアメフトの書籍は、メリーランド(Maryland)州アナポリス(Annapolis)にある同アカデミーの図書館に残されており、歴史好きのファーガソン氏も評価するに違いない。