【1月24日 AFP】今秋に総選挙が予定されているドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相が、ロシアによる大規模な虚偽報道の標的になる恐れがあることが、欧州連合(EU)の作業部会の調査で明らかになった。関係筋が23日、明らかにした。

 匿名を希望したこの関係筋がメディアに語ったところによると、ポピュリスト政党が支持を拡大している中で選挙を迎えるフランスとオランダも標的になる可能性があるという。米大統領選でドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が番狂わせで勝利したことを追い風に、反EUを掲げるポピュリスト政党は勢いを増している。

 ロシアによる虚偽情報の拡散に対処するためEUが2015年に設置した作業部会「イースト・ストラトコム・タスクフォース(East StratCom Task Force)」の調査によると、メルケル首相は昨年、特にドイツ国内への100万人近くの移民の受け入れを決定したことに対して虚偽情報の標的になることが増えたという。

 この作業部会は、ウクライナ危機をめぐってロシア政府が、ウクライナ政府やEU加盟28か国に不利な虚偽情報を報道機関やソーシャルメディアに流したことを受け、欧州委員会(European Commission)のフェデリカ・モゲリーニ(Federica Mogherini)副委員長(EU外交安全保障上級代表)主導で設置された。

 同作業部会は専門家とロシア語に精通した人ら10人程度で構成され、ウクライナや移民危機、欧州でのテロ攻撃など、欧米の指導者の立場を悪くするようなニュースを監視している。

 作業部会のウェブサイトに掲載された声明によると、この15か月間で「公になっている事実に反する、18言語におよぶ2500以上の事例」を発見したという。

 19日に同部会がウェブサイトに発表した報告書は、「ロシア寄りの虚偽情報の拡散が組織的な戦略であることは疑う余地がない」と述べ、「虚偽情報の拡散は政治的目標を達成するための非軍事的手段だ」と指摘している。(c)AFP