【1月20日 AFP】全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament 2017)で衝撃の2回戦敗退を喫したノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)の元コーチ、ボリス・ベッカー(Boris Becker)氏が、同選手はかつて誇った無敵のオーラを失っており、「1強時代」は終了したと語った。

 テニス界は今、世界117位のデニス・イストミン(Denis Istomin、ウズベキスタン)に敗れ、2008年のウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon)以降の四大大会(グランドスラム)では最短の早期敗退を喫したジョコビッチの話題で持ちきりだ。

 グランドスラム通算12勝を誇るジョコビッチは昨年、ウィンブルドンと全米オープンテニス(US Open Tennis Championships 2016)の連覇に失敗すると、シーズン後半にはアンディ・マレー(Andy Murray、英国)に王座を明け渡した。自身初制覇を果たした6月の全仏オープン(French Open 2016)ではキャリアグランドスラムを達成したが、以降の四大大会ではタイトルから遠ざかっている。

 昨年末に3年間続いたジョコビッチとの師弟関係を解消したベッカー氏は、今年で同選手が30歳を迎える一方、新世代の選手たちには扉が開かれているという。

 ベッカー氏は「ノバク・ジョコビッチの敗戦は本当にショックだ」としたうえで、「彼は守備的にプレーしすぎていた。それに、まったくと言っていいほど主導権が握れていなかったし、それを奪いに行こうともしていなかった」とコメント。さらに全豪で2勝するなどグランドスラム通算6勝の実績を持つ同氏は、かつての教え子の低迷は若手選手たちにのし上がる刺激を与えると話す。

 また、メルボルン(Melbourne)で米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に対し「今、大きなドアが開かれている」と述べたベッカー氏は、「私たちは、長きにわたって次世代について話してきた。そして現在19歳、20歳、21歳の選手にとっては、扉の向こうに進むときが来ている」と語った。

「支配者(ジョコビッチ)が苦戦しているとき―アンディ・マレー(Andy Murray、英国)を侮辱するつもりはないが、ノバクが勝者だった―は、道が閉ざされていた。しかし今は転換期にある」

■「バッグを取って家に帰る」

 19日の試合では、ジョコビッチにトレードマークの激しさや勝利する意志が欠けていたのに加え、かつて誇った「メンタルの異常な強さ」がなかったとベッカー氏が指摘すれば、元ウィンブルドン王者のパット・キャッシュ(Pat Cash)氏も、同選手が絶対的な力を誇った時代は終わったと続いた。

 キャッシュ氏は英BBCに対し「今回の敗戦は、ノバクが完全に競争力を失ったことを示している。そこに疑いの余地はない」と話した。

「彼が真のナンバーツーとして世界1位の座を争うのを見てみたいが、この調子でいけば、それを目撃することもできないと思う」

 一方、これまで6度栄冠を手にしてきたロッド・レーバー・アリーナ(Rod Laver Arena)での試合後、報道陣の質問に応じたジョコビッチは、「もし彼らが勝てると信じていなければ、僕だけでなく、どんな選手、そしてどんな大会でもプレーしていないだろう」とし、ライバルたちが自身から白星を挙げることは可能だと理解していると認めた。

 今回の敗北から何を取るかと聞かれた元王者は「バッグを取って家に帰る」と答えた。(c)AFP/Robert SMITH