【1月20日 AFP】母親に師事し、目の問題でサングラスをかけているデニス・イストミン(Denis Istomin、ウズベキスタン)は、全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament 2017)で特に注目される存在ではなかったものの、男子シングルス2回戦で前回王者ノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)を撃破し、ついに母国のスター選手にのし上がる機会がめぐってきた。

 世界ランク117位のイストミンは、全豪で通算6度の優勝を誇るジョコビッチを相手に4時間48分の激闘を繰り広げると、フルセットの末に7-6(10-8)、5-7、2-6、7-6(7-5)、6-4で勝利を収め、四大大会(グランドスラム)史上最大の番狂わせを演じた。世界2位のジョコビッチにとって、グランドスラムでの2回戦敗退は、マラト・サフィン(Marat Safin、ロシア)氏に敗れた2008年のウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon)以来となる。

 蛍光色のサングラスが特徴的なイストミンには、グランドスラム通算12勝を誇るジョコビッチが得意とするコートで大金星を収めたことで、スター選手の仲間入りを果たすチャンスが訪れている。世界各地を転戦し、アジア地区のプレーオフを勝ち抜いて獲得したワイルドカードで今大会に出場しているイストミンは、「世界2位を破ったことは自分にとって本当に大きい。これだけで終わらないことを望んでいる。この調子で前進し、勝利を積み重ねていけるように努力していく」とコメントした。

 30歳のイストミンは、2001年に交通事故で脚を負傷し、3か月入院したあと、テニスから2年間も遠ざかっていた。その際、医師からは再び競技に戻れるか分からないと診断されている。しかし、母親のクラウディア・イストミナ(Klaudiya Istomina)氏の指導を受け、2004年からツアーに復帰すると、そこから長い年月をかけ、ジョコビッチを破るというキャリア最高の勝利を手にした。

「ジョコビッチに勝てる」と誰かに予言されれば何と答えるかと問われたイストミンは、「きっと『正気か?』と言うだろう。5セットならばなおさらだ。自分としては、ノバクを相手に5セットも粘れるなんて、体力的にも精神的にも無理だと思っていた。だから本当に良くやったよ」と答えた。

 3回戦では第30シードのパブロ・カレーニョ・ブスタ(Pablo Carreno Busta、スペイン)と対戦するイストミンは、母親がコーチとして帯同することで、費用の節約になっていると冗談交じりに話している。「家族がチームの一員だと、とても恵まれているね。母親がコーチで幸運だったよ。それにもう一つ良いことがある。それは余計なコーチ代を払う必要がないってことさ」

 さらに、試合後に母親から何と声をかけられたのかと質問され、「『グッジョブ』と言われた」と笑顔で明かしたイストミンは、母国ウズベキスタンで最も有名なアスリートではないものの、これからは状況が一変するかもしれない。

「僕は母国でスーパースターのような存在ではない。ロシアのモスクワ(Moscow)に10年も住んでいて、ウズベキスタンに足を運ぶことはあまりないんだ。だけど、これからウズベキスタンでプレーするときは、誰もが僕を知っていると思う」 (c)AFP/Robert SMITH