【1月24日 AFP】蚊が大量に入った箱の中に腕を入れる勇敢なボランティアたち──。西アフリカのブルキナファソにあるこの研究施設では、マラリア対策のための革新的な「武器」の開発が進められている。その武器とは、「ファソ・ソープ」と呼ばれるせっけんだ。

 このプロジェクトの目的は、マラリア蚊を寄せつけないようにするための安価な製品を開発すること。2015年にはアフリカを中心に50万人近くが、蚊が媒介するマラリアへの感染で死亡した。

 ブルンジ人の研究者ジェラード・ニヨンディコ(Gerard Niyondiko)氏は、ストップウオッチ片手に箱の中の蚊の動きを観察する。

 ボランティアたちの腕には、地元原産の植物オイル数種の混合液が塗られている。この特殊な匂いのする液体が蚊に刺されることを防ぐのだという。

 首都ワガドゥグ(Ouagadougou)にあるマラリア研究センター(Malaria Research and Training)では、昨年6月から、このせっけんの効果を確かめるための実験が繰り返し行われ、オイルの種類や混合率を改善してきた。

 西アフリカではマラリアが原因で2分に1人の割合で子どもが死亡しているとニヨンディコ氏は述べる。世界保健機関(WHO)によると、2015年のマラリア感染者2億1400万人のうち88%がアフリカでのケースで、死亡した感染者は43万8000人に上ったという。子どもへの影響が最も大きかった。

 予防策として蚊帳が支給されているが、感染の拡大は続いている。ニヨンディコ氏は「蚊帳は、就寝時以外は使えないし、風通しが悪くて熱い。就寝時以外の予防策となる防虫剤は、貧しい家庭では家族全員分を買う余裕がない」と説明。そこで、貧困層でも入手可能で、これまでの生活習慣を変えることなく使えるせっけんに注目したのだという。

 ファソ・ソープはブルキナファソを含め、マラリア被害が最も多いサハラ砂漠以南の6か国を対象地域としている。

 ファソ・ソープは2013年、社会に貢献するビジネスモデルや起業家などに授けられる国際的な賞「グローバル・ソーシャル・ベンチャー・コンペティション(Global Social Venture Competition)」で、2万5000ドル(約280万円)を受賞して話題になった。

 だが資金不足でプロジェクトは一時停止に追い込まれた。再開したのは2015年、石鹸の効果を長く維持させる技術「マイクロカプセル化」を専門とするフランスのスタートアップ企業との提携により、さらに科学的なアプローチが取られるようになった。

 昨年にはクラウドファンディングで7万ユーロ(約850万円)を調達した。

 現在の実験は、WHOの規定に基づいて行われおり、このせっけんがWHOに承認されれば、他国でも使用されるようになる。(c)AFP/Nabila EL HADAD