【1月11日 AFP】成功への飽くなき渇望で、何人もの有名選手や名将を使い捨ててきたレアル・マドリード(Real Madrid)。そのクラブで、シニアレベルでの指導は未経験だったにもかかわらず、欧州王者と世界王者に輝くという順風満帆な一年を過ごしたのが、現在のジネディーヌ・ジダン(Zinedine Zidane)監督だ。

 ちょうど1年前、レアルは現在とはまったく異なる状況に置かれていた。新たに就任したラファエル・ベニテス(Rafael Benitez)前監督は、なかなかチームをまとめられず、わずか7か月で解任された。そこでフロレンティノ・ペレス(Florentino Perez)会長がチームの救世主として白羽の矢を立てたのが、当時ユースチームのレアル・マドリード・カスティージャ(Real Madrid Castilla)を率いていたジダン監督だった。

 現役時代には当時の世界最高峰の選手と評され、チャンピオンズリーグとW杯を制すなど、すべてを手に入れてきたジダン監督だが、そうした輝かしい実績と比べても、この一年の快挙には息をのむばかりだ。就任から指揮を執った公式戦55試合では、敗戦の数(2)よりも、獲得したトロフィーの数(3)の方が多い。

 欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2015-16)、クラブW杯(2016 FIFA Club World Cup)、UEFAスーパーカップ(UEFA Super Cup 2016)と3個のタイトルを手に入れて2016年を締めくくったジダン監督は、迎えた新年初戦のスペイン国王杯(Copa del Rey 2016-17)5回戦第1戦でも、セビージャFC(Sevilla FC)を3-0で退け、就任1周年の節目を快勝で飾った。続く7日のリーグ戦も5-0で大勝し、無敗記録は国内最長タイの39試合にまで伸びている。

 ペレス会長は先日、インタビューで「昨年のジダンがわれわれの人生を変えた」と話している。

■唯一無二のカリスマ性で選手の心をつかむ

 ペレス会長からひいきされるジダン監督だが、チーム作りの面では会長の言いなりだったわけではない。いわゆる「銀河系」と呼ばれる、ユニホームの売り上げ枚数順で選んだようなスター軍団好きで知られる会長に対して、監督は現役時代の優雅なボールさばきからは想像もつかないハードワーク志向を見せている。

 監督が重用しているのは、ファンの人気が高く、メディア受けもいいハメス・ロドリゲス(James Rodriguez)やイスコ(Isco Alarcon)といった選手よりも、守備的な中盤のカゼミーロ(Casemiro)やウインガーのルーカス・バスケス(Lucas Vazquez)という割合に地味な選手だ。

 それでもジダン監督は、自尊心の強い選手ばかりの控室をまとめるという、ベニテス監督をはじめとする前任者たちには荷が重かった仕事をやり遂げている。それは監督に、世界最高の選手と言われた現役時代の実績と、今も練習で垣間見える繊細な技術があるからだ。