【1月5日 AFP】移民を助けるのは善行かそれとも犯罪か──。フランス南部ニース(Nice)の裁判所で4日、アフリカ出身の移民たちの密入国を助け、住まいを与えた男性の裁判が始まった。欧州で移民や国境管理が政治問題化するなか、連帯の精神と法律の規定のどちらが優先されるべきか議論を呼んでいる。

 男性はイタリアとの国境近くでオリーブ農園を営むセドリック・エルー(Cedric Herrou)被告(37)。フランスの警察の目を盗んで国境から車で移民たちを運び、宿泊場所を提供してきた。地元ではちょっとした英雄だが、現在は罪に問われる身だ。

 地元ではエルー被告のほかに、2人が同じく移民を違法に助けたとして裁判が開かれている。これらの移民は頼りない船に乗って地中海(Mediterranean Sea)を横断し、欧州に渡って来た。エルー被告の農園は検問を逃れて密入国を試みる移民の絶好の通過ルートになっていたという。

 エルー被告は昨年10月、活動家仲間を率いてフランス国鉄(SNCF)所有の保養地を占拠し、使われていない別荘を移民たちに開放。だが3日後に警察が介入し、移民たちは簡易キャンプに移送され、自身は逮捕された。

 エルー被告は4日、法廷の席で「自分がこうした活動をしているのは助けを必要としている人たちがいるからです。これはしなければならないことなのです。(移民の)家族たちが苦しんでいるのです」と裁判官に訴えた。

 一方、検察側は執行猶予付き禁錮8月を求刑し、被告の車両の没収なども求めた。また、自分の行動を正当化するための「政治的な舞台」として裁判所を利用しているとエルー被告を非難した。

 エルー被告は開廷に先立ち、裁判所前に集まった数百人の支持者に「人々を助けるために法律を破らなければならないとしたら、そうしてしまおう!」と気勢を上げていた。

 裁判で有罪と認められれば、エルー被告は最高5年の禁錮刑を受ける可能性がある。判決は2月10日に言い渡される。(c)AFP/Vincent-Xavier MORVAN