■「わが国のブッシュ氏よりずっと巧み」

 トランプ氏が2008年、ロシアの大富豪ドミトリー・リボロフレフ(Dmitry Rybolovlev)氏にフロリダ州パームビーチ(Palm Beach)にある大邸宅メゾン・ド・ラミティエ(Maison de L'Amitie)を記録的な9500万ドル(現レートで約110億円)で売却すると、ロシア国内でトランプ氏の名はさらに知れ渡り、ロシアの報道関係者らを歓待するようになった。

 ロシアの報道関係者らを前にトランプ氏は、「ウラジーミル・プーチン氏が本当に好きだ。尊敬している。仕事を見事にこなしている。わが国のブッシュ氏よりずっと巧みだ」と絶賛している。

 2011年、大統領選への挑戦を真剣に考え始めていたトランプ氏にとって、バラク・オバマ(Barack Obama)大統領とプーチン大統領とを比較することは、他者との違いを演出する手法の一つでもあった。

 モスクワでミス・ユニバース大会が開かれた2013年までに、トランプ氏はロシア大統領府のそばにトランプタワーを建設するという新たな契約を結んでいた。

 結局これも実現はしなかったものの、プーチン氏に対する称賛の念はますます強まった。プーチン氏が米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に、シリア和平の実現方法を米政府に説く内容の論説を寄せた際にはこれを褒めちぎった。

 しかし、2015年に選挙戦に突入すると、トランプ氏の親ロ姿勢には徐々に厳しい目が向けられるようになった。プーチン政権が反体制派ジャーナリストらの殺害を容認したとする疑惑をあっさり一蹴すると、波紋が広がったのだ。

 それでも、大統領選に勝利し、ロシアから祝福を受けたトランプ氏は相変わらず、プーチン政権の残虐性と抑圧姿勢に関する報道には耳をふさぎ続けている。(c)AFP/Paul HANDLEY